◆思い出のマーニー(日)
19世紀末の画家モネの代表作「睡蓮」で不思議な体験をした。仏オランジェリー美術館で大壁画をじっくり見る機会があった。
印象派らしく、蓮池の周辺はぼんやりとした輪郭で描かれている。が、時間の経過とともに色とりどりの葉や水面の動きが現れ、生き生きとした風景が浮かび上がる。同じ絵が違って見え、動くような感覚だ。きっと、最初は気付かなかった色彩を少しずつ知覚し、脳が絵の奥行きを映しとったのだ、と思う。
今作には似た魅力がある。何度も全景が映し出される海辺の村の湿っ地屋敷。主人公の心象を反映するように、時にセピアっぽく、時に夏の彩りに変化する。同じ屋敷の別の顔。現実か、幻覚か。見入ってしまうような深みのある絵が境界線を曖昧にする。
心に傷を負った主人公杏奈は療養先で謎の少女マーニーと出会い、しだいに癒やされる。つられるように映像も明るくなる。
登場人物たちの動きというより、定点から自然の変化をながめるような描写が印象的で、風や湿り気を肌に感じるようだ。4年前の「借りぐらしのアリエッティ」に続く米林宏昌監督の2本目の作品。【相原斎】
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