演歌歌手福田こうへい(40)が3日、宮城・名取市の「ゆりあげ港朝市」で、東日本大震災からの復興支援無料ライブを行った。

 11年3月に震災が発生した翌月から、出身地である岩手県の三陸地方を訪れ、避難所などで30回以上の慰問ライブを実施。12年10月にメジャーデビューした後も、毎年、被災地を訪れて無料ライブを行い、13年から昨年までの3年間の14公演で、約2万4000人に歌声を届けてきた。

 今年は「宮城県でも歌ってほしい」とのファンの声に背中を押される形で、初めて同県にかけつけた。

 「元気だった? 元気だったば、よがったぁ~」。親しみのある“お国なまり”で語りかけてライブがスタート。デビュー曲「南部蝉しぐれ」や新曲「北の出世船」、民謡「津軽じょんから節」など7曲を披露した。「自分は演歌と民謡の二刀流。野球界でいえば(投手と野手の)大谷翔平。歌謡界なら福田こうへいです」とトークでも盛り上げた。

 ライブ前の取材では、復興支援にかける思いなどを熱く語った。震災から1年ぐらいは、慰問先で歌唱する際、タイトルや歌詞に「海」や「波」の言葉がある曲は歌唱しづらかったという。「でも、ある時に三陸地方の人から『涙を流させてちょうだい』と言われたんです。心を込めて魂の歌を届ければいい。自分の歌で元気になってほしいと願いながら一生懸命に歌えばいいと気付いた」という。今では、この復興支援ライブが「できる限りやり続けたい」というライフワークになっている。

 この日は、被災地に元気を届けにきたが、福田も辛い時に多くのファンから励ましをもらっている。前所属事務所との専属契約問題などの影響で新曲を発売できず、8月24日に「北の出世船」を発売したのは2年5カ月ぶりだった。「新曲を出せないでいる間、ライブにだれも来てくれないのではと心配もしたが、本当に多くの人に支えてもらった。自分には歌しかないから、歌で恩返しをしないといけない。命を削ってでも皆さんの心に歌を届けます」。

 「北の-」は発売から約2カ月で販売9万枚を突破。14年以来、2年ぶりのNHK紅白歌合戦出場への期待も高まっている。「何とか頑張りたい。被災した人たちからの応援を思うと、『出たい』というよりも、出て恩返しをしないといけないなという『使命感』みたいなものも感じます」と言い切った。

 震災から5年半が過ぎた。被災地の復興は遅々として進んでいないが、この日の福田は、集まった約1500人の人たちに笑顔になれる「元気のもと」を確かに届けていた。