脳出血のため、68歳で亡くなった漫才トリオ「レツゴー三匹」のレツゴーじゅんとして親しまれた俳優逢坂じゅんさん(本名・渡辺美二=わたなべ・よしじ)の通夜が10日、大阪・ベルコシティホール桜川で営まれた。

 喪主で長男の卓実さん(46)は「何か大きな仕事をやりきった顔で…。役者の顔です」と、棺に眠る父の様子を明かした。次男の寿博(としひろ)さん(38)は先月、じゅんさんと食事をし、普段は一切仕事の話をしなかったというが、そのときは、昨年のドラマ「半沢直樹」出演を振り返り、しきりに「オレ、がんばったんか?」と、うれしそうに話していたという。

 また、三男知晃(36)は、NHK「ごちそうさん」最終回にも出演した俳優で「役者として大きくなって恩返ししたい」と話した。

 通夜にはレツゴー正児、歌手中村美律子、同じ事務所の女優音無美紀子、芸人仲間の西川きよし、桂ざこば、月亭八方、笑福亭鶴瓶ら約300人が参列。じゅんさんと親交があった故藤山寛美さんの娘で女優の藤山直美も姿を見せた。

 舞台共演も多かった音無は「コメディーに出させてもらったときに、芝居で大事なのは“間”だとあらためて教えられました」。素顔のじゅんさんは「余計な荷物は持たない人」と表現し、40日以上に及ぶ長期の出張公演でも、靴下、下着など5セットほどの着替えを入れただけのボストンバッグひとつだったという。

 「僕はね、芝居がありゃあ、それでいい」と言うのが口癖だったそうで、音無は「食事に行っても、お金を人に払わせない。何も持とうとしない。持っているのは芸だけでした。宝物がいっぱい詰まった芸だけでした」としのんだ。

 そんなおとこ気あふれるじゅんさんについて、後輩の八方は、20代のころ、借金約10万円を返そうとしたときの逸話を明かした。

 「返しに行ったら、ええんか?

 ほんまに返すんか?

 言うて、なんべんもなんべんも。それで、お返ししたら、周りに『八方は若いのに、きっちりしとる』言うてくれてね。そんなん、当たり前やん。借りた金返すのは。やのに…そんな優しい人でした」と、じゅんさんの思い出を語った。

 また、棺には愛用のニット帽、サンダル、最近は控えていたタバコ、7月に出演予定だった名古屋・中日劇場の中村美律子公演のチラシが入れられた。

 この日、出席した中村は2月にチラシの写真撮影をしたといい「私のお父ちゃんの役で。台本が間に合えばよかったのに…。もっと教えてほしいことがいっぱいあった」と涙ぐんだ。

 葬儀・告別式は今日11日午前11時から同所で。喪主は長男の渡辺卓実(わたなべ・たくみ)氏。