俳優浅野忠信(40)二階堂ふみ(19)主演映画「私の男」(熊切和嘉監督)のイベントが15日、都内で行われた。観客との質疑応答が行われ、浅野演じる主人公淳悟と二階堂演じる養女花とが禁断の関係を結ぶ場面について、男性の観客から「二階堂さんと刺激の強いシーンが何回かあったと思いますけど…興奮と言いますか…そういうのは共演中に感じるものなんでしょうか?」と質問が飛んだ。

 浅野は笑いながら、赤裸々に思いを語った。

 「それは、もう、本当に友達にもしょっちゅう『ラブシーンの時は大丈夫なのか?』と散々、聞かれてきたんですけどね。意外と、やっぱり仕事の時は“男モード”がちゃんと抑えつけられるというか。もちろん、そういうシーンになり切っていますから興奮するとは思うんですけど、余計な興奮はせずに仕事に集中して向き合うことが出来ています。おかげさまで。そうですよね、男は…すみません」

 それを聞いた二階堂も「あははは」と笑い、場内も笑い声に包まれた。

 ところが、その直後、近親相姦(そうかん)の被害者という50代女性から、その場面について厳しい意見が飛んだ。

 「私は被害者です。浅野さん演じるお父さんは加害者。二階堂さん演じる花さんは、未成年だから被害者。興奮するのかとか、一般の人たちはアダルトビデオでしか認識はないと思いますが…あまり美化されてしまうと。私は50代なので恥ずかしくありません。勇気を持って言ってみました」

 場内は静まりかえり、熊切監督は「難しいところを描いている…そういうことを言われるのは当然と思って描いた。うまく言えませんが、そういうことはあると思うけれど、愛はあるということを描きたかった。美化して描いたというつもりはない。そこにある厳しさをもって描いたつもりです。」と神妙な面持ちで説明した。そして「映画は自分の思っている以上に、人に影響を与えると思っていて、それでも作らざるを得ないという強い思いがあって作った。質問のようなことは覚悟の上で撮った。どうしても形にしなければならないと、取りつかれたような思いで撮った映画。今日のことは、いろいろ持ち帰って考えたい」と、やや声を震わせながら思いを吐露した。