石原裕次郎さんが製作・主演して大ヒットした68年の映画「黒部の太陽」が初めて舞台化され、今年10月5日~26日まで、大阪・梅田芸術劇場で上演される。このほど大阪市内で制作発表が行われ、裕次郎さんが演じた建築会社の技師を演じる中村獅童(35)は「裕次郎さんの熱い魂を引き継いで演じたい」と意気込んだ。今回の舞台化を機に同映画を製作した石原プロモーションでは、約40年ぶりとなる同映画のオリジナル版上映を検討している。

 映画「黒部の太陽」は、当時の映画会社の5社協定によって不可能とされていた裕次郎さんと三船敏郎さんの共演が実現し、大ヒットになった。公開から40年が経過した今まで、スケールの大きさから舞台化はもちろん、「映画は映画館で楽しむもの」という裕次郎さんの遺志をくんで、ビデオ化やDVD化されていない「幻の作品」だ。

 だが、今年は映画の公開から40年だけでなく、黒部の関電トンネル開通からも50年を迎えた。そんなメモリアルイヤーということもあり、「黒部の太陽」の舞台化が決まったという。伝説の名作の舞台化だけに、裕次郎さんが演じた建築会社の技師を演じる獅童は、制作発表の席上で表情を引き締めた。

 獅童「裕次郎さんの熱い魂を引き継いで、しっかりと一生懸命、体当たりで演じたい。裕次郎さんをまねようと思っても、まねることはできないので、大事なのは魂だったり、映画や芝居に対する情熱とか、そういうハートの部分。ちょっとでも裕次郎さんの情熱に近づけるようにやりたい」。

 獅童は子供のころ、裕次郎さんが出演したドラマ「太陽にほえろ」や「西部警察」をよく見ていたといい、「(萬屋)錦之介のおじは『裕ちゃんはオレより足が長えんだ』とよく言っていました」と笑みを浮かべた。裕次郎さんと同時代を生きた、時代劇映画の大スター萬屋錦之介のおいにあたる獅童が今、裕次郎さんの「魂」を引き継ごうと意気込んでいるのは、何かの縁かもしれない。

 この舞台化を境に、映画「黒部の太陽」が再び脚光を浴びる可能性は十分にある。同映画を製作した石原プロは裕次郎さんの十七回忌の03年7月、都内のホテルに3万人を招待してオリジナル版を1時間ほど短縮した作品を上映したことがある。同プロの小林正彦専務は「いろいろな反響次第では東京や大阪で約3時間15分のオリジナル版の上映を検討したい」。封印されているオリジナル版の上映が、約40年ぶりに実現することになるかもしれない。