【上海16日=近藤由美子】嵐が東京、台北、ソウル、上海を回るアジアツアー最終公演を上海大舞台で行った。嵐のアジアツアーは06年以来2度目だが、ジャニーズ事務所のアイドルが当地で公演を行うのは初めて。客席に限りなく近づこうとするジャニーズ得意の大がかりな演出に、中国公安当局からNGが続出。代替策として急きょダンスを増やすなどメンバーも臨機応変に対応し、パフォーマンスで華やかな舞台を演出した。

 フィナーレでは、リーダー大野智(27)を筆頭にメンバー全員が乗り込んだゴンドラが高さ10メートルまで上昇。その後、客席に向かってゴンドラがゆっくり進む中、二宮和也(25)は身を乗り出して客席をのぞきこみ、ファンにピースサインを送った。この日、最もファンに近づいた瞬間だ。

 ジャニーズとしても初の上海公演。松本潤(25)が「初めての場所だから大変なことも多かった」と振り返ったが、アジアツアー用の演出変更を余儀なくされた。当地ではジャニーズが得意とする客席に近づく移動式ステージや火の演出など派手な演出はあまり例がない。さらに、安全面への配慮からか、日本では一般的なレーザー光線の使用まで、公安当局からことごどく「待った」を掛けられた。

 そのため、この上海公演だけで準備には半年以上もかけた。スタッフの粘り強い交渉で、フィナーレで水10トンを使用したウオータースクリーン演出や、高さ10メートル以上でのゴンドラ使用、松本が開発した逆さづりでの空中歩行「MJウォーク」の披露まではこぎつけた。関係者によると、通常の海外公演よりはるかに多い70人のスタッフを日本から派遣。水の演出はタンクなどの機材を日本から持ち込んだ。

 万全な態勢を整えても当局の判断に時間がかかる演出も多く、当日まで演出が確定しなかった。だがフォーメーションの乱れもなく、メンバーは慣れない中国語の歌唱やあいさつも完ぺきにこなすなどの集中力と団結力を発揮。逆境を、逆にツアーの集大成となるステージに仕上げた。相葉雅紀(25)は「放心状態です」と充足感に浸った。

 櫻井翔(26)は「今回初めての上海でしたが大きな1歩になったと思う」。二宮は「未来が広がるコンサートになりました」。グループ結成1周年を迎えた会見で櫻井が「まだ小嵐です」と話してから9年。本物の嵐となってアジアを駆け抜けた。