「もうこれが最後かもしれない」と13日の復帰落語会で引退をほのめかした落語立川流家元の落語家立川談志(74)が日刊スポーツの取材に応じ、「引退」か「続行」かに悩む胸の内を明かした。「引退という区切りをつけるのは難しい」と言いながらも、声がかれ、肉体的に万全ではない状態に「もう成り行きに任せるしかない」と言い切った。

 高座を終えた談志が、客席に向かって「もうこれが最後かもしれない」と言う場面は、昨年8月に糖尿病治療などのために休養する前から度々あった。しかし、8カ月ぶりの高座で思わず口にした言葉は以前とは意味合いが違ったという。「選挙で候補者が『最後のお願いです』『最後の最後です』『これが本当の最後です』と言うのと同じような感じだった。でも、今回はもう年貢の納め時かなという気持ちが強かった」と打ち明けた。

 一方で簡単に引退に踏み切れない気持ちもある。「声がかれて大きな声が出ないから、ささやくようにやる落語や、老いて気息奄々(えんえん)になった談志がぜーぜー言いながら古典落語に挑む。見せものとしての落語だけど、それでもいいのか。見せものになりたくないという気持ちと、なっても構わないという気持ちの両方がある。落語家談志の業(ごう)というか、やっかいだね」。

 休養前は弟子に背負われて高座に上がったこともあるが、今は「普通に生活するだけなら、元気になったと思う」と言うまで回復した。「以前は食事といっても薬を飲んでギョーザを食べるだけだったけど、今は1日2食ちゃんと食べている。ただ、朝飯が午後2時になるけどね」。しかし、落語家としては声がかれて、肉体的にも万全でない状態に苦しんでいる。かつては「健康のためになんて大嫌い」と公言していたが、医師から「声が出るようになる」と勧められて腹筋を始めた。「寝た状態で毎日100回から150回やっている。でも、なかなか声が良くならない」。

 親友の元タレント上岡龍太郎(68)は2000年に芸能界から引退した。「上岡のようにすっぱりと引退できるのか。落語会出演という収入源がなくなっても、どうやら暮らしていける蓄えはある。引退を表明して、また出てきてもいいじゃないかという思いもある。シャバにまだ未練がある自分がいるんだね」。

 5月4日の弟子立川志らく独演会、6月7日の談志一門会の出演が決まっていたが、新たに7月7日に立川キウイの「万年前座」出版記念落語会への出演も決まった。「どんどん出演だけが決まっている。医者から『しゃべらないよりはしゃべった方がいい』と言われているし、やっていくんだろうな。引退という区切りをつけるのは難しい。声や体力を意識しながら、もう成り行きに任せるしかないかな」。引退か現役続行か。談志の悩みは続く。【林尚之】

 [2010年4月21日8時53分

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