俳優佐藤健(23)の主演映画「るろうに剣心」(大友啓史監督)が、世界64カ国で公開されることになった。2日、東京・新宿ピカデリーで「大ヒット御礼舞台あいさつ」が行われ、出演者、観客の前で発表された。また、公開から8日目の1日時点で、観客動員100万147人、興行収入(興収)12億1354万1000円を記録したことも発表。興収40億円も目指せる最高のスタートを切った。

 上映後、観客に内緒で舞台に駆け上がった佐藤は、世界64カ国での公開決定を聞き、喜びをかみしめた。「監督と『世界に行きたいね』と言っていたので、夢がかなったじゃないですけど…うれしいですね」。主人公・緋村剣心役を演じた佐藤は撮影前の昨年6月、役作りでワイヤアクションの鍛錬を続けながら、大友監督と「世界を目標にしましょう」と誓っていた。

 大友監督はNHK勤務時代の97年から2年間、米ハリウッドでアクションや脚本、演出を学んだ。原作の漫画が累計発行部数5000万部で世界23カ国で翻訳され、アニメも各国で放送された「るろうに剣心」で世界を目指せると確信した。そして10年の大河ドラマ「龍馬伝」でめぐりあった佐藤の起用を熱望した。身体能力の高さと、明と暗、繊細さと強さなど「素材としていろいろ出せる」と判断したからだ。大友監督は「アクションは海の向こうに越えていけるジャンル。結果が出てうれしい」と胸を張った。

 ドラマの収録が雨で中止となり、急きょ、駆けつけた共演の武井咲(18)も「(海外公開は)恥ずかしいですけど、どんなリアクションがあるのか。行きたいですね、海外」と胸をときめかせた。佐藤が「武井さんは忙しい。売れっ子だから」と突っ込むと、武井は「違う。行くから!!

 本当に大丈夫です」と全力で海外行きを直訴した。

 原作の持つ力に、大友監督が俳優自らに体を張ったアクションを課して生まれた生々しさと、「龍馬伝」で培った本格時代劇の演出を加えたことで、時代劇や映画ファンを取り込んだことが大ヒットにつながった。今季の邦画では興収63億円を記録した「BRAVE

 HEARTS

 海猿」と、59億円を売り上げた「テルマエ・ロマエ」が抜きんでているが、それに迫る勢いだ。世界公開の規模では、7カ国が決定して19カ国からオファーを受けている「テルマエ・ロマエ」を上回る。「るろうに剣心」旋風は、日本から世界へと拡大しそうだ。【村上幸将】

 ◆るろうに剣心

 幕末に日本最強の剣客として恐れられた人斬り抜刀斎は、1868年(明元)1月、新政府軍が徳川幕府軍に勝ったことを知ると剣を地面に刺し、姿を消した。10年後、抜刀斎は“殺さずの誓い”を立て、人を斬ることのできない「逆刃刀」を持ち、緋村剣心(佐藤)と名を変え全国を流浪していた。東京に現れた剣心は、亡き父の神谷活心流道場を守る薫(武井咲)と出会う。

 ◆「るろうに剣心」の公開が決まった主な国

 ドイツ、オランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、韓国、オーストラリア、ニュージーランド