歌手さだまさし(61)が18日に出版した小説「風に立つライオン」(幻冬舎)が、俳優大沢たかお(45)主演で映画化されることが24日、分かった。大沢が、さだ原作の映画に主演するのは演技賞を多数受賞した04年「解夏」以来。さだ原作の07年「眉山」にも出演しており、モデルから転身後、さだ作品が俳優としての評価を高めるきっかけにもなっている。今回の映画化は、大沢の強い熱意が始まりだった。

 小説「風に立つライオン」はさだが87年に発表した同名曲が題材だ。歌詞は、アフリカで巡回医療に携わる青年医師が、日本に残したかつての恋人に宛てた手紙。穏やかな文面ながら、海外から見つめた日本を憂う内容にもなっている。この曲をきっかけに、アフリカに渡った医師が現れ、青年海外協力隊や、海外に住む日本人の心の歌として支持された。物語仕立ての歌詞にメッセージを託す「マサシングワールド」を代表する曲でもある。

 大沢も強い影響を受けた1人だった。「初めてこの歌を聴いた時、主人公の人生をもっと知りたいと思いました」と歌詞の背景に思いを巡らせ、これまでの海外の仕事中にも、脳裏に浮かぶこともあったという。実は5年前に、さだに小説化を直訴していた。そして映像化も夢見ていた。

 さだは、その熱意を受け止め、大沢が演じることを前提に執筆を始めた。それでも、曲のスケールの大きさを一番知るだけに、何度も「書けません」と頭を下げようとしたという。苦しみながらも、同曲を通じて知り合った医療関係者や、東日本大震災後の支援活動のため何度も足を運んだ東北での経験をヒントに、アフリカで日本人医師に救われた少年が医師となり、震災直後の東北にやってくる方向性をつかんだ。完成した原稿は、真っ先に大沢に届けられた。

 大沢はヒットドラマ「JIN-仁」でも医師を演じた。映画化決定の一報に大沢は「この主人公の清くたくましい生きざま、命のバトンをつなぐ物語に心が震えました」とあらためて読後の感想を述べ、「そして今、一映画人としてこの小説がどのように映像化されるのか心から楽しみにしています」と話した。

 15年公開予定で、今後、撮影準備に入る。

 ◆「風に立つライオン」

 ちょうど26年前の87年7月25日に発売されたアルバム「夢回帰線」に収録された。さだの父親の友人で青年海外協力隊としてケニアで3年間活動した柴田紘一郎医師をモデルに8分50秒の曲を書き上げた。デビュー40周年を迎えた今年のファン投票で2位。小説は関係者の証言によって、アフリカで巡回医療に携わる主人公の青年医師の活動や、戦闘で傷ついた少年兵士との触れ合いなどがつづられる。やがて少年兵士は医師となって来日。新たな絆が生まれる。