競泳の女子200メートルバタフライで2大会連続銅メダルの星奈津美(25=ミズノ)が、26歳の誕生日を迎える21日に会社員の国久雅樹さん(33)と結婚することが11日、分かった。国久さんが会場で声援を送る中、前回ロンドン大会後ではベストタイムの2分5秒20で銅メダルを獲得した。14年11月にバセドー病の手術を受けるため入院。選手としての危機だったが、毎日病院に通う国久さんに支えられ、早期復帰につなげた。2個目の銅メダルは、最愛のフィアンセに贈るプレゼントでもあった。

 自然と涙が出た。星は前回ロンドン大会で銅メダルも悔しさが消えず、金メダルを目指してから4年。その間は不調、コーチ変更、バセドー病の手術など紆余(うよ)曲折があった。だからこそ、両親、平井コーチら周囲の人へ感謝の思いが脳裏に浮かぶ。その中の1人に、21日に結婚する国久さんもいた。

 もともと互いの母親同士が親友。幼なじみでもあった。ロンドン大会翌年の13年1月に再会すると意気投合。交際が始まった。ちょうどその頃は星がバセドー病を悪化させるなど不安定な状態だった。14年11月に手術を受けた。国久さんは会社帰りに毎日見舞いに訪れ「一般人の自分の体なんてどうでもいい。代わってあげたい」と励ました。

 国久さんの支えもあり、星は約3週間後に練習復帰。翌15年7月の世界選手権で金メダルを獲得した。テレビ観戦した国久さんは涙が止まらない。「もっと大事にしないと。本当に国の宝。すごい人なんだ」と実感した。世界選手権金メダルでリオ五輪代表に内定。すると国久さんにもスイッチが入り「転ぶなよ」「けがするなよ」と今まで以上に星の体を気遣うようになった。

 「逆に自分が感謝しているんです」と国久さん。星がバセドー病の手術を受ける2カ月前。国久さんの母が病を患った。トップアスリートの星に迷惑を掛けないよう見舞いを断ったが「わたしのお母さんでもある」。当時は自身のコンディションに不安がある中、練習前後に病院に来て、世話をしてくれた。国久さんは「アスリートとして、人間として尊敬できる」と話した。

 国久さんの応援を背に、星は3大会連続出場の五輪で躍動した。決勝では前半から積極的なレースを展開。最後50メートルは誰よりも速いタイムで追い上げる。目標の頂点こそ逃したが、36年ベルリン大会の前畑秀子、08年北京大会の中村礼子に続き、競泳日本女子では史上3人目の2大会連続メダル。前回と同じ銅も「すべて出し切った。4年前の悔しさはない」と星。国久さんは「苦しい過程も見てきたからうれしい。最高のプレゼントになりました」と笑顔を見せた。【田口潤】

 ◆星奈津美(ほし・なつみ)1990年(平2)8月21日、埼玉県生まれ。栄進中-春日部共栄高-早大。ミズノ所属。08年北京五輪代表、12年ロンドン五輪銅メダル。世界選手権は11年、13年と4位で、昨年は金メダル。164センチ、56キロ。