日刊スポーツ評論家の秋田豊氏(46)が、今年も「熱血秋田塾・九州キャンプ編」と題し、注目のチームや選手を直撃する。第1回は、昨季Jリーグと天皇杯の2冠を達成し、クラブW杯でも準優勝した鹿島の宮崎合宿を訪問。国内19冠のJ最強クラブとして、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)初制覇に太鼓判を押した。チームは7日、1週間の合宿を打ち上げた。

 鹿島はクラブとして本気になった。アジア圏ではなかなか勝てないと言われてきたが、今年はかつてないくらいの良い補強ができた。アジア王者を獲得できる戦力は整った。

 石井監督も「ACLをとりたいからチームが2チームできるだけの戦力を整えてくれた」と言っている。主にボランチだった柴崎(スペイン2部テネリフェ移籍)が抜けたのは痛手だけれど、違った特徴を持ったレオ・シルバ(前新潟)がいる。DAZNニューイヤー杯を見ても、高い位置でボールを拾って、ラストパスを出す場面もあった。新潟の時はすべてに顔を出していたから、鹿島では守備だけでなく攻撃での彼の良さがもっと増えると思う。

 ペドロ・ジュニオール(前神戸)のドリブル、金森(前福岡)もおもしろい存在。レアンドロ(前パルメイラス)も十分にフィットするにおいがする。いろんな組み合わせができる。ターンオーバーにするのか組み替えるのか、石井監督も頭を悩ませるだろう。

 日本のJリーグを世界に認知してもらうために、リーダーとしてやっていかないといけない。ACLを勝って、世界の舞台を目指す。なし得なかった世界1位も夢ではない。

 選手個々も、ひと皮むけた状態になっている。センターバックの昌子は「クラブW杯で決勝までやって成長できたし、自信になった」と言い切っていた。宮崎合宿の姿を見ても、何か去年までとは違う雰囲気がある。「アフリカ人の身体能力の強さや、南米のボールのないところで体でぶつかってくるずる賢さを経験できたのは大きい」と目もギラギラ。日本代表に入れば、毎回そういう経験ができる。だからこそ、まずは昌子が代表定着。レギュラーを奪わないといけない。

 私も日本代表のトルシエ監督時代に鹿島とはまったく違うサッカーだったけれど、ラインコントロールのタイミングなどをチームに還元できた。今の鹿島には定着している人がいない。代表で国際経験を積むことで、チームが強くなることに確実につながる。10年W杯南アフリカ大会で優勝したスペインは半分以上がバルセロナの選手、14年ブラジルW杯を制したドイツだってBミュンヘンが数多く占めていた。昌子がレギュラーをつかめば、他の選手の成長にもつながり、鹿島の強さがより強固となる。(日刊スポーツ評論家)