【アル・ラーヤン(カタール)=16日】日本代表MF本田圭佑(24=CSKAモスクワ)が、完全ノーコメントでB組首位突破に全神経を集中させた。B組首位の日本(FIFAランク29位)は今日17日、アル・ラーヤン競技場で1次リーグ敗退が決まったサウジアラビア(同78位)と対戦する。本田圭は、13日のシリア戦で左足首を捻挫。14、15日に続き、この日の試合会場での公式練習(冒頭除き非公開)も別メニュー調整。練習後はひと言も発さずも先発出場は濃厚。ザックジャパンの大黒柱として決勝トーナメントへ、チームを引っ張る。

 左足首を痛めている本田圭は、一番先にこの日の公式練習のピッチに現れた。DF長友と会話すると、選手の輪から離れ1人でボールを操った。左足首の状態を確かめるように、軽いボールタッチを繰り返す。重要な一戦に備え確認を繰り返した。

 ウオーミングアップ終了と同時に、別メニュー調整を開始した。ピッチの周囲を同じく別メニュー組のDF伊野波、森脇を追い越すほどのスピードで周回。非公開練習に入ると8対8の紅白戦やセットプレーの確認の最中も、約30分にわたりドリブルを含めたランニングをこなし、本番に向けてしっかり汗をかいた。

 練習後は試合前日恒例の無言だった。だが、「(足の状態は)まだ分かんないっす。今日はちょっとしゃべりたくないので、いいですか」と険しい表情を浮かべていた15日の練習後とは打って変わり、穏やかな笑顔を浮かべた。それは試合出場への手応えを表していた。

 故障に強い強靱(きょうじん)なフィジカルが持ち味だ。1・5列目という相手に最も狙われるポジションで、欧州や国際Aマッチの激しい試合をこなす選手は、故障と隣り合わせ。だが、本田圭はプロ入り後、故障に悩まされたことが、ほとんどない。

 南アフリカW杯前に日本代表の主軸として君臨して以降、代表活動中に故障による別メニュー調整は今回が初めてだった。周囲に痛みや弱音を漏らすこともないという。

 だが今回は状況が違う。シリア戦直後の控室。どんな激しいタックルを受けても試合後にアイシングしない本田圭が、即座に患部を冷やした。北京五輪代表から同僚のDF長友は「今まで五輪でもA代表でも(本田)圭佑がアイシングしたのは見たことがない。珍しいと思った」と証言しながらも、こう続けた。「でも、圭佑は(サウジ戦に)出ると思います」。本田圭の思いを戦友が代弁した。

 左足に痛みを抱えても、日本の大黒柱としての責任感は常に胸にある。「アジアはレベルアップしている。でも、アジアでやれなければ、世界ではやれない。相手がどこであろうと優勝するだけ」。常日ごろの言葉は、エースの責任を背負う決意表明でもある。

 13日のシリア戦で負傷後、14日は宿舎で静養、15日は練習場脇の施設で自転車型トレーニング器具を激しくこぎ、この日はピッチで走った。本番へ向けて逆算はできている。「次も勝たないと」。シリア戦直後の言葉を現実にする。

 サウジアラビアは1次リーグ敗退が決まったが、強敵に違いない。主力MF松井の故障欠場も決まり、苦戦が予想される中、本田圭の大黒柱としての真価が問われる。【菅家大輔】