<W杯アジア最終予選:日本2-1オマーン>◇B組◇14日◇マスカット・スルタン・カブース・スタジアム

 日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)は、ただピッチをさまよっているようだった。走れない。ボールも止められない。厳しいアウェーでの大事な一戦。唯一ともいえる仕事は、終了間際にようやくキープ力を生かして時間を稼いだプレーくらい。ザックジャパンの「エース」は中東の暑さに屈し、アウェーのピッチでほとんど何もできなかった。試合後は険しい表情。報道陣の質問には答えず、帰りのバスへと急いだ。

 定位置ともいえるトップ下でスタートしたが序盤からおかしかった。24分にはフリーでミドルシュートを狙ったが、まともにミートできずボールはあらぬ方向へボテボテの当たりとなって転がった。2分後にもMF遠藤への近距離のパスをミス。これを相手にさらわれ、自陣深くまで攻め込まれ肝を冷やした。

 暑さに苦しんでいるのは明らかだった。試合中、控え選手がベンチで毛布を羽織る真冬のモスクワとは正反対の真夏のような日差しのオマーン・マスカット。中東入りが11日夜。その後にカタール・ドーハからマスカット入り。体を慣らす十分な時間もなかった。生活拠点のモスクワとの気温差は40度近くになる。「暖かい中でやる方が、充実する。自然にあるものなので、順応しないといけない」。試合前は強気だったが、終盤のアゴの上がった様子から見るに、暑さにKOされ、ダウン寸前だった。

 寒さには強い。プロ入り後は真冬でも好んで半袖でプレー。さすがに極寒のロシアへの移籍後は厚着の重装備となったが、もともとが雪の降る石川・星稜育ち。寒さを苦にしたことはほとんどない。一方で、暑さには強いとはいえない。最終予選初戦からずっと超人的な働きをみせてきただけに物足りなさばかりが残った。真夏のような暑さの中、背番号4の存在がかすんだ90分だった。