喜ぶのは、今でしょ!!

 日本代表はW杯アジア最終予選を2試合残すが、本大会に出場する可能性が限りなく100%に近いことが10日までに判明した。統計家の西内啓(ひろむ)氏(31)によると、最終予選を突破する確率は99・9938%という決定的な数字が導き出された。同代表アルベルト・ザッケローニ監督(60)は日刊スポーツの直撃取材に対し「答えられない」とだけ話したが、5大会連続出場の歓喜を今すぐ味わっても、決して早すぎることはなさそうだ。

 数字上はW杯出場決定と言ってもいい。現時点で、日本代表がW杯に出場できる可能性は99・9938%。ヨルダン戦(3月26日)で引き分け以上なら確定していたはずだが、結果は1-2の敗北に終わった。5大会連続出場に加え、3大会連続最速切符はお預けになった。だが、すでに出場権内の2位以上を逃す可能性は“天文学的数字”であることが、西内氏の分析によって明らかになった。

 日本がプレーオフに回る3位へ転落するパターンは、残り試合数と、対戦カードから[1]イラク[2]ヨルダン[3]日本[4]オーストラリア[5]オマーンしかない。そうなるには、(1)日本が2戦全敗(2)ヨルダンが日本との得失点差16を逆転(3)イラクが3戦全勝する、という3条件が必要。過去20年のW杯予選及びアジア杯(予選含む)の戦績をもとに分析した結果、逃す可能性はゼロに近くなった。

 西内氏

 サッカーは不確実性のあるところが醍醐味(だいごみ)だし、こういった数値を導き出せるところも面白いと思う。統計学的には、「出場できる」と言っても言い過ぎではないというのが、正直な気持ち。でも、逃す可能性がジャストゼロになるために、日本代表には頑張ってほしいですね。

 出場を喜ぶのは、今でしょ!?

 この事実に対してザッケローニ監督は、6日に埼玉スタジアムで行われた浦和-磐田戦を視察後、直撃取材を受け「分からない。答えられない」と明言を避けた。当然、指揮官が手綱を緩めることはしない。次のオーストラリア戦で勝ちにいく気持ちは変わらない。ホームでW杯を決められるのは、史上初めて。ファンにとっても待ち遠しい瞬間だ。しかし、現時点でこのデータがあることは、今後の本大会を見据えチーム強化プランを組む上では、心強い。

 現時点で、出場権を逃す確率は、0・0062%。これは、血液型がAB型Rhマイナスの確率0・05%より、落下した人工衛星が地球上の誰かに当たる確率の0・03%(NASA調べ)よりケタ違いに低い。最終決戦は約2カ月後。極秘トレを敢行している本田も戻ってくるかもしれない。ザッケローニ監督も欧州視察に向かうなど余念がない。ザックジャパンは、99・9938%を100%にするまで突き進む。【取材・構成=栗田成芳】

 ◆西内氏の計算方法

 アジア予選B組1位の日本は、2位ヨルダンとの勝ち点差は6、得失点差は16上回る。すでに3位以上は確定しているが、3位(プレーオフ行き)になる確率を計算することで、2位以上になる数値を導いた。データは、過去20年のW杯予選及びアジア杯(予選含む)をもとにした。

 (1)日本が2連敗

 アジアで日本が負ける確率は11%で、その2乗は1・2%。

 (2)ヨルダンが日本との得失点差16を逆転

 日本の1試合あたりの得失点差の平均値は1・85点。同じくヨルダンは0・51点。両軍の残り試合は計4戦あるため、1試合あたり4ずつ得失点差が縮まる可能性は、統計学的に計算すると約2%。ヨルダンはかつて9点差で勝利したことがあるため意外と高い。ただ得失点差で並んだ場合、総得点を上回る確率はさらに低い。例えば日本が0-2、0-2の連敗、ヨルダンが6-0、6-0の連勝で成立。

 (3)イラクが3戦全勝

 イラクがアジアで勝つ可能性は51・5%。日本戦については(1)で計算済みのため、2試合分は2乗で26%。

 以上の条件がそろう確率を計算すると1・2×2×26=0・0062%。よって、日本が出場する確率は99・9938%。これはあくまでも最終予選突破の確率で、プレーオフを加味すればさらに高まる。

 ◆西内啓(にしうち・ひろむ)1981年(昭56)4月20日、神戸市生まれ。兵庫県立長田高校から東大医学部へ進学し健康科学学科生物統計学を専攻。卒業後、08年に東大大学院医学研究科医療コミュニケーション学分野助教に着任。その頃から執筆活動にも力を入れ、10年に退職。現在は統計家として、企業などにデータに基づいて調査、分析、システム開発や戦略立案をコンサルティングしている。著書「統計学が最強の学問である」(ダイヤモンド社)は15万部を超えるヒット。また「遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる」(ソフトバンク新書)など多数。