<国際親善試合:日本0-2ブルガリア>◇30日◇豊田スタジアム

 3-4-3布陣は、またも失敗した。日本代表(FIFAランク30位)がブルガリア(同52位)と対戦し、完敗した。アルベルト・ザッケローニ監督(60)は、14年W杯ブラジル大会アジア最終予選のオーストラリア戦(6月4日、埼玉)前に同システムを試したが、収穫は得られなかった。MF本田圭佑(26)抜きの2試合で、就任以来初めての連敗。本田依存症から脱皮できず、ダメージだけが残る最悪の結果を残した。

 指揮官は、明らかに動揺していた。試合後の公式記者会見の最後。「ミナサン、コンバンワ」と頭を下げた。恒例となった会見冒頭の日本語のあいさつを、会見の最後にしてしまった。すぐさま、間違いに気づき、苦笑いして席を立った。

 出口が見えない。パスがつながらない。パスをつないでも、前に進まない。不慣れな3-4-3でスタートした日本は、暗いトンネルの中にいるようだった。突破口を見いだせないまま、前半45分間、放ったシュートはわずか3本と、もがき苦しんだ。

 ザッケローニ監督

 システムの問題ではなく、リズムが低いと、うちのいいところが出ない。ゴールに向かうパスの供給率が少なかった。全体的にフィジカルを高めていかないと、リズムは改善されない。今日はインテンシティ(激しさやスピード)はあまりみられなかった。結果を最重要視しないフレンドリーマッチで、オプションを試すことはいいのではないかと思う。

 悪循環が繰り返された。動きを制限された選手は、イライラを募らせ、動きに精彩を欠いた。一方、要求通り動かない選手を見て、指揮官もストレスをためた。右から乾、前田、香川を3トップに並ばせた。短いパス交換で決定機を見いだせる特長のある選手を前線に集めながら、サイド攻撃にこだわった。乾が中央にしぼると、指揮官は2度、大きなしぐさで、サイドラインに張り付くように指示した。中央の前田が香川とポジションチェンジすると、中央から動かないように指示した。

 ザック流3バックは、攻撃時にサイドで数的有利を作ることが特徴だが、サイドで数的優位にも立てなかった。前半は主に右から攻めたが、MF内田と乾が同時に攻めても、相手DFは必ず2人でマークしていた。当然、良質クロスは上がらない。前半早々と失点したこともあり、相手が積極的に攻めてこず、マークの受け渡しなど、守備の確認も満足にできなかった。

 結局、3-4-3を試したのは前半45分のみ。後半はあっさり、本来の4-2-3-1に戻した。45分間だけでは、テストとしても消化不良。しかも布陣を変えてもチームを立て直せなかったことは、オーストラリア戦を前に、ダメージだけを残す、最悪の結果となってしまった。

 3月26日のヨルダン戦に続き、ザッケローニ監督は就任以来初めての連敗を喫した。いずれも大黒柱の本田はいなかった。本田依存症からも脱皮できず、3バックも満足に試せず、大事な1試合を無駄に消化してしまった。6月3日には、本田が合流する予定。得意とする4-2-3-1で、本田にすべてを託すしか、突破口は見いだせないのか。指揮官の手腕が問われる。【盧載鎭】