これぞ役者だ! 東京のFW武藤嘉紀(22)が、J1開幕戦で2ゴールと光り輝いた。昨季の3冠王者・G大阪の本拠地で2点ビハインドの展開から、後半30分に素早い反転で今季初ゴール。ロスタイムには約25メートルの同点シュートを決めた。日本代表に初選出され、Jリーグの新人歴代最多得点に並ぶ13点を挙げた、昨季以上の活躍を予感させるプレー。日本代表監督に就任するバヒド・ハリルホジッチ氏(62)に向けて猛アピールした。

 やっと笑顔があふれた。ゴールへの軌道を見届けた武藤が、膝から崩れ落ちるG大阪の選手を尻目に、無我夢中で歓喜に沸くベンチへ飛び込んだ。静まり返る昨季3冠王者のベンチ、スタンド。2点ビハインドで敗色濃厚の苦しい展開を、1人で打開し追いついた。

 クライマックスは1点を追う後半ロスタイムだった。相手DFのクリアボールが目の前に転がってきた。右足でコントロールして「いい位置に置けた」。少し浮いたボールを、下から上へなぞるように右足を振り抜いた。「思い切って振って、持っているシュート力でゴールのいいところにいけば入る」。昨季終盤、無理を重ね打つことができなかった右足は完治。ドライブ回転しながら右へスライスしてゴール右隅に吸い込まれた約25メートルの同点弾は、豪快で、華があった。

 「狙い通りと言っても、あんなにいいところへ行くとは思わなかった。もう時間もなかったし、あの場面を逃したらもうチャンスがなかった。アウェーで3冠王者に2ゴールはポジティブなこと。チームを救うことができて良かった」

 0-2で迎えた後半30分の1点目は進化を示した。右クロスをFW前田が頭で落としたボールが、こぼれてきた。ゴール前で相手DFを背負った状態。左に食いつかせながら、右方向へ反転して左足シュート。相手の股の間を抜きゴール右へ流し込んだ。「DFを見て、GKを見て、FWらしく決められた。1点目の方が考えて決められたゴールだった」と振り返る。

 昨季は思い切りのよさを買われて日本代表に定着した。DFだけでなく、GKとも駆け引きしながら挙げたゴールは成長の証しでもある。勢いだけでなく、相手を見抜く洞察力が備わったFWは、日本代表監督に就任するハリルホジッチ氏の目にもとまるはずだ。

 「代表は、やはり入りたい。そのためにアピールしないといけないと思っていた。今日もゴール以外はひどい内容。求めている内容ではなかった。プレーの質はまだまだ上げないといけないと思うけど、1試合目で2点決められて少し肩の荷が下りた」

 昨季はアギーレ体制初弾を決めて一気にブレーク。新体制1号を決めるとW杯メンバー当確という縁起のいいデータは白紙に戻った。それでも「また決めればいい」と開き直る22歳が、今季もJで、そして代表で輝きを放つ。【栗田成芳】