海外移籍で注目を集める東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が、御前弾でチームを10年ぶりの首位へ導いた。後半19分に左クロスを頭で合わせて今季4点目。同代表ハリルホジッチ監督が視察する前で決勝点を決めた。チームはこれで浦和に並び、05年以来の首位タイ。プレミアリーグのチェルシーから正式オファーを受け、移籍か残留かで揺れる中、勝負強さを見せた。
周囲の雑音も、けんそうも、ピッチの中では感じなかった。武藤が求めるものは1つ。「いろんな雑音やプレッシャーはあるけど、チームのために考えた結果」。後半19分、左から右へと流れ、ルーズボールを拾うと左のFW河野へ展開した。DF太田が左サイドを駆け上がる間、今度は中央へ。ダイナミックにピッチを動き回り、最後は太田の左クロスをダイビングヘッドでたたきつけた。
チェルシーに移籍するのか、しないのか。代表のハリルホジッチ監督も視察するが、試合以上に注目を集めた一戦で決勝点。試合後も去就の話題を振られ言った。「歩む道をゆっくり決めたいけど、どこにいけば成長できるのか。先を見据える上で自分に合ったチームで出場して成長できるところを考えていきたい」。今季5戦4発。チームは引っ張られるように3連勝で10年ぶりの首位タイに立った。さらなる成長を望む武藤の進化の爪痕があった。
179センチ。国内でさえ、決して大きくはない体格で制空権を争うには、タイミング勝負しかない。つまり、相手よりも早く落下地点に入って、先に飛ぶこと。その分だけ、スプリント(時速24キロ以上のダッシュ)回数も増えて、両チーム合わせて1位で今節全体では4位の35本。GK権田からのロングキックを前半に2度競り勝ち起点に。ゴールの場面も頭。前を向いたときの突破力だけでなく、起点になる力を文字通り“頭”を使って克服しようとしている。
胸の内には常にある海外への挑戦心。さらなる成長を求めながら、夢を見すぎず「出場できるところ」と現実的に考えている。現時点で正式オファーを受けているのはチェルシーのみ。移籍となってもオランダ1部フィテッセへの期限付き移籍が現実路線。出場できる場所からさらにステップアップしたいと考える武藤が、J1で活躍を続ければ今夏の獲得を狙う欧州クラブが複数出てきてもおかしくない。限られた時間の中で、決断が迫られる。
ヒートアップする周囲をよそに「第1ステージ優勝するために勝ち星を積み上げる」と武藤。これ以上ない置き土産になってもいいように、今は東京で頂点を目指す。【栗田成芳】
◆東京のJ1での首位 05年4月の第4節以来、10年ぶり。J1で10シーズンぶりの首位は、99~09年の清水、02~12年の広島に並ぶ「最長ブランク首位」となった。05年の東京は、開幕から第4節まで首位だったが、第5節で2位転落。今回のように第5節以降の首位は、クラブがJ1に初昇格した00年の第1ステージ第5節以来、15年ぶり2度目。



