山形が残り5分から3点差を追いつき、貴重な勝ち点1をつかんだ。敵地での清水戦は前半26分までに0-3とされたが、後半40分にFWディエゴ(31)が今季初ゴール。4分後にFW中島裕希(30)が決めて1点差とすると、ロスタイムにFW林陵平(28)が同点のヘディングシュートをたたきこみ、次につながる、あきらめない姿勢をみせた。

 誰もあきらめていなかった。2-3で迎えた後半のロスタイム表示は4分。3分を経過したところで、奇跡は起こった。左サイドのMF高木利からのクロスに、途中出場の林が頭で合わせた。敗色濃厚のチームを救う一撃は、公式戦1年7カ月ぶりのゴール。「利弥が右足で蹴る時はファーサイドに来るとイメージできていた。震えるくらいうれしかった」。昨年12月に第1子の長女が誕生した男は、元イタリア代表FWトッティの「おしゃぶりパフォーマンス」で喜びを爆発させた。

 思い出の地で、復活ののろしを上げた。林が明大3年だった07年の天皇杯で、清水から2点を決めて3-3と善戦した。PK戦で敗れたが「相性の良いスタジアムだと思っていた」と待望のゴールを予感していた。13年11月に負った左膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大ケガを乗り越えたストライカーは「1点取れれば、これからも取れると思っている」とうなずいた。

 「1点取れば、流れが変わる」。誰もが同じ思いだった。石崎監督はハーフタイムに、11日のJ2で前半に3-0された東京Vが後半39分から4点を奪って岐阜に逆転勝ちした例を挙げた。途中出場で1点差に迫るゴールを決めた中島は「0-3からでもヒーローになってやろうと思っていた」。全員の執念が実を結び、開幕7試合でわずか2得点だったチームが残り5分で3ゴールを奪った。

 試合後、選手たちは抱き合って健闘をたたえ合った。林は「この勝ち点1をすごく大きいものにするためにも、次の横浜戦は重要」。4月は未勝利に終わったが、アウェーでの得点もFW陣のゴールも今季初。勝ち点4で並んでいた相手に総力戦でドローに持ち込んだ手応えが、J1残留への道につながっていくはずだ。【鹿野雄太】