広島DF水本裕貴(29)がアウェー鹿島戦のピッチに最後まで立ち、フィールドプレーヤーのJ1最多記録となる127試合連続フルタイム出場を達成した。前半25分に警告を受けて迎えた後半ロスタイム。ゴール前で鹿島DF伊東を倒したが「よけたら勝手にこけた」と冷静に対応。主審も伊東のシミュレーションを取り、残り数分で記録が途切れる事態は避けられた。

 広島MF服部公太(04~07年)の記録を抜き、単独1位になった。史上77人目のJ1通算300試合出場も果たし「先発リストに名前を書いてくれる監督、仲間や支えてくれる家族に感謝したい」と喜びを口にした。

 選手生命の危機が出発点だった。11年5月7日の甲府戦で頭蓋骨を骨折。急性硬膜外血腫も伴う大けがで緊急の開頭手術を受けた。約2週間の入院で死を意識し「家族のためにサッカーやめなきゃ」とまで思ったが、ヘッドギア着用で105日後に復帰。この日と同じカシマでの鹿島戦で「鮮明に覚えてますね。運命的」。そう振り返る舞台で4年後に記録を打ち立てた。

 負傷後は「恐怖心との闘い」だったが、取り除く過程で研ぎ澄まされた。「練習前後のケア、私生活の節制はプロとして最低限。けがする前より精神面の波がなくなり、自分のできるプレーも知った」。12、13年はリーグ連覇。その間、1度の負傷も累積警告もなく前人未到の領域に届いた。

 毎年5月7日になると夫人が「覚えてる?」と思い出させてくれる。あの時、小さかった長女は今年で5歳になる。「サッカーを続けられてるんだな」。感謝の積み重ねが鉄人にご褒美を呼び込んだ。【木下淳】

 ▼J1連続試合フルタイム出場 広島DF水本裕貴(29)が、11年8月20日の第22節鹿島戦から127試合連続フル出場。フィールドプレーヤーでは、MF服部公太(広島)の126試合連続(04~07年)を抜いてJ1新記録となった。GKを含めると、鹿島GK曽ケ端が07~14年に記録した244試合連続が1位で、水本の127試合連続はJ1歴代5位となる。また、水本は16日の鹿島戦で史上77人目のJ1通算300試合出場を達成。