ACミランの日本代表FW本田圭佑(29)が千葉・幕張に設立するジュニアユースとユースのクラブチーム「SOLTILO(ソルティーロ)FC」のスーパーバイザーに元日本代表DF秋田豊氏(45=日刊スポーツ評論家)が就任する。本田の所属事務所が2日に発表した。設立の意図や、秋田氏と強化にあたる意図などを本田が初めて具体的に語った。

 キーワードは「世界で通用するプロサッカー選手を育成するため」-。高校生年代のユースと中学生年代のジュニアユースのチームを立ち上げた本田が、その狙いを説明した。G大阪のジュニアユースからユースに昇格できず石川・星稜高に進みプロ入り。挫折とともに歩んだキャリアが本田という選手を形作ったが、今回敷いたのはジュニアユース-ユースという真っすぐな道筋。自身の道のりとは違う。

 「サッカー選手を育成しようと思っているからです。人間・本田圭佑を作ろうとは思っていませんから。同じように作り上げるのはかなり困難なこと。まず時代が違う。そして祖父母や父親から受けた教育は、ある意味あり得ないものでした。そうするなら鬼のようなスパルタ式で子どもたちを育てないといけなくなる。でも、そんな存在を育成しようとは思っていない。サッカー選手で世界でトップになれる選手を育成するという意味でのユース、ジュニアユース設立です。まずはサッカーの能力を高めたい、プロとして成功させたい。そのためにこの組織が必要だと思ったから作ったわけです」

 2つの組織のお目付け役となるスーパーバイザーに自身がプロ入りした際に名古屋で“イロハ”を学び、たたき込んでもらった元日本代表の秋田氏を直接交渉の末に招いた。狙いは「世界」の2文字で説明できる。

 「コンセプトは世界で活躍する選手の育成です。だとするなら、世界を知る人材が必要になる。それで秋田豊さんにお願いしました。W杯での経験がある。DFの視点から(攻撃的な)自分が伝えられない面も、伝えてもらえる。秋田さん以外のスタッフ(監督やコーチ)にも自分がよく知っている人だけを配置します。本田圭佑を、その哲学を知り得る人だけに責任ある立場についてもらいます」

 同じようにW杯で戦った経験を持つ秋田氏の力も借りながら、本田イズムで育成される選手たちに注入する。それは本田はテクニックに秀でた選手ではないが、重視するのはやはりスキル(=技術)だという。

 「できるだけ最先端のスキル、成長へのノウハウで選手を作り上げた方がいいと思いました。本田圭佑にはない“技術”を早くから身につけてもらう教育の場にしていきたい。もちろん可能な限りその力を発揮するための人間教育も入れていこうと思っています」

 教え子たちがジュニアユースからユースとステップアップし羽ばたく舞台は自身がプレーする欧州をイメージしている。この夏には実質オーナーを務めるオーストリア3部SVホルンを電撃的に買収。ホルンを経由しさらなるビッグクラブへ-。そんな青写真の裏には、自身の経験がある。

 「プロになる前からできるだけ早く海外でプレーしたいと思っていた。本当はもっと早いタイミングで海外に来たかったわけですが、行けなかった。こういった経験をもとに、まず小学生以下の子どもたちをスクールで受け入れ成長できる場を作りました。そして、そのまま真っすぐに将来はヨーロッパまで駆け上がってもらいたいと思って組織を整えました。夢を持つ子どもたちに、自分よりもっともっとヨーロッパで大きく成功するためのチャンスを手にしてもらいたい。それが一番の願いです」

 日本代表でW杯に出場し、名門ミランの10番を背負うまでになった。そんな自分を超える選手を本気で育成し、日本サッカーにピッチ外でも貢献する。【取材・構成=八反誠、波平千種通信員】

 ◆セレクション 両チームは16年4月始動予定でユースチームは早速セレクションを実施。秋田氏も参加し選手選考にあたる。1次選考は17日、2次は18日。いずれも東京・清瀬市内で開催。概要と申し込み方法などは公式サイト(http://soltilo-fc.com/)参照。