元日本代表監督で、14年から四国リーグFC今治の代表取締役(CEO)を務める岡田武史氏(59)が“現場復帰”する。同クラブの2016方針発表会が19日、愛媛・今治新都市スポーツパークで行われ、岡田氏が総監督のような立場のチーフ・メソッド・オフィサー(CMO)を兼任すると発表。昨季まで経営に専念してきたが、今季は悲願のJFL昇格に向けてピッチでも強化を進めていく。

 岡ちゃんがピッチに帰ってくる。昨季は四国リーグを制したが、全国地域リーグ決勝大会1次ラウンドで敗退。目標のJFLに届かなかった。岡田氏はCEOとして資金集めに奔走。“現場介入”は「試合だけ見て感想を言う程度」だったが「今年はJFL昇格が目標ではなく必須。そのために経営の一部をスタッフに任せ、現場に出る時間を増やす」と決断。トップチーム強化に芝上でかかわる。

 原点回帰だ。昨季終了後のある日、今治市内で地元関係者と酒を酌み交わしていて、こう言われた。「最近の岡田さん、面白くないよね」。頭にきた。「自転車操業だし、ままごとのような役員会を最初はしていた。でも徐々に変わって、最後は黒字(決算)。経営は楽しい」と思っていた直後。しかし、冷静になると「目が覚めた。経営者としての自分に酔っていた。リスクを冒して挑戦してこそ自分だし、期待に応えられる」。その具現化だった。

 現在はバルセロナの育成法をベースに、日本人の組織力を最大化する「岡田メソッド」を構築中。それを統括するCMOを新設して兼任し、スーツからジャージーに着替えて慣れ親しんだ場所に立つ日を増やす。現時点で、4月開幕のリーグ戦でのベンチ入りは「考えていない」と話すにとどめたが、既に宮崎キャンプの練習試合でベンチ入り。普段の直接指導も再開している。13年11月に中国・広州緑城の監督を辞してから約2年半。あくまで吉武博文新監督(元U-17代表監督)を支える立場だが、春には岡田氏もサイドラインに立つ姿が見られそうだ。【木下淳】

 ◆FC今治 愛媛県今治市がホームのアマチュアクラブ。1976年(昭51)に「大西サッカークラブ」として設立。数度の名称変更を経て09~11年はJ2愛媛FCの下部組織「愛媛FCしまなみ」として活動した。12年の天皇杯2回戦でJ1広島を撃破し一躍有名に。昨季は12勝1分け1敗(得失点差+53)の成績で四国リーグを制覇した。ホームグラウンドは桜井海浜ふれあい広場サッカー場。