首位浦和は名古屋に4-1で快勝した。

 被災地への思いを、弓矢に乗せた。浦和MF李忠成(30)が、熊本の被災者にゴールと勝利をささげた。1-1の後半11分。左サイドからのクロスは、ゴール前の李のやや後方に飛んだが、体を投げ出しながらの左足ボレーでねじ込んだ。点取り屋らしい会心の得点。スタンドに向けて矢を射るゴール後のパフォーマンスに、黄金週間のサポーターが沸いた。

 この「矢」には、特別な思いも込められていた。24日、同僚のGK西川、大谷、DF槙野とともに、熊本地震の被災地を訪れた。ACL掛け持ちの連戦が終わり、久々に迎えたオフ。しかし「今行かなければ」と強い思いに駆られ、休みを返上した。

 現地ではサッカー交流会や、物資を携えての避難所訪問など、できる限りの支援活動をした。しかし、1日でできることには限りがあるとも感じていた。だから、一緒にサッカーをして笑顔になった子どもたちに、李はこう誓った。

 「点を取って、必ず勝つ。だから見ていてほしい。今はつらいと思うけど、君たちはひとりじゃない。僕たちは遠い埼玉からだけど、いつも君たちのことを思っているから」

 約束は尊いものだ。前半は名古屋のプレスに手を焼き、ミスが目立つ苦しい展開にもなった。それでも李は、得点を決めてみせた。「今日はそういう思いを、ゴール後の弓矢に乗せることができた。本当によかったと思います」。避難所にあった大型のテレビモニターが目に浮かぶ。遠くても、思いは必ず届いたはずだ。【塩畑大輔】