プレミアリーグの強豪アーセナルへの移籍が決まった広島FW浅野拓磨(21)が、意地の2発を決めた。正式発表後、初の試合となったホーム鹿島戦にフル出場。後半9分と37分に右足でゴールを重ね、今季初の1試合2得点を達成した。大敗に本拠でのジャガーポーズは封印したが、移籍までの残り3試合を2ゴール発進。

 世界最高峰リーグに挑む男の本領だった。アーセナル移籍決定後、最初の試合で浅野が2点を固め打ちした。まずは0-2の後半9分、MF丸谷のスルーパスで最終ラインの裏を突いて右足でゴール。まだ1点差あったが、思わず笑う。本拠のサポーターに4試合ぶりの今季3点目を届けた。

 直後の4分間で2失点して1-4とされたが、心は折れない。2点目は後半37分だ。FW宮吉のパスをペナルティーエリア内で受けると、右に持ち出して右足を鋭く振った。マークは元広島のファン・ソッコ。「足が伸びてくる特徴を覚えていた。引っ掛からないよう上を狙った」。瞬時の判断で逆サイドのゴール左上にぶち込んだ。最近1分け4敗の天敵からの2得点にも「勝利の中でのゴールじゃないと喜べない。あと2点、取っていれば引き分けだった」。ジャガーポーズ封印に悔しさを込めた。

 13年のプロ入り後、浅野が得点した公式戦は過去20戦負けなしだった。ここで不敗神話が途切れたことが寂しさを募らせるが「課題が多く見つかった。でも、めげずにやっていければ成長できる」とアーセナル挑戦の糧となる敗戦だった。

 残り2試合で英国へ旅立つ。「注目されるのはありがたいけど、自分はスーパーな選手じゃない。だから重圧とか感じなかった」。過信しない姿勢が体を軽くした。移籍会見で目標に掲げた2ケタ得点まで、残り2戦で6得点。少し前進したが「欲しいのは勝利」と言い換えた。クラブ史上最高となる推定380万ポンド(約5億3300万円)の移籍金だけでなく、残り2戦で勝ち点もチームへの置きみやげにする。【木下淳】