93年のJリーグ発足時から参戦する名門名古屋が、年間16位でクラブ史上初のJ2降格が決まった。既に降格が決まっていた湘南に1-3の完敗。久米一正社長(61)は元日本代表DF田中マルクス闘莉王(35)やGK楢崎正剛(40)ら主力に残留を求める意向だが、親会社のトヨタ自動車が支援縮小を示唆するなど前途は多難。1年でのJ1昇格へ、場合によってはチーム解体の危機に直面することになる。

 1万8474人で真っ赤に染まった本拠地に涙、怒号、拍手が交錯した。Jリーグ24年間の歴史で名古屋の初のJ2降格が決定。試合後の場内1周では闘莉王が手で涙を拭い、楢崎も肩を落とした。「来季もクラブに残ってくれ!」と叫ぶサポーター。J1残留を目指し、8月の電撃復帰以降の7試合を戦った闘莉王は「今までのサッカー人生のいい出来事を、今日の残留に引き換えたかった。誰のせいでもないし、自分の責任」と泣いた。

 前半だけで2失点。後半はFWシモビッチのPKで1点差に迫った。勝ち点で並んでいた15位新潟が広島にリードを許し、引き分けでも残留が決まる状況だった。だが、その後にも失点。今季の守備はリーグワースト2位タイの58失点、先制を許せば15戦未勝利。クラブワーストの18戦連続未勝利もあった。小倉前監督の事実上の途中解任、残り8試合でジュロブスキー監督が指揮を執ったが、最後まで後手に回った。

 1年でのJ1復帰へ、久米社長は闘莉王、東京が獲得を目指すFW永井らの名前を出し「しっかり交渉しないといけない。そこが一番重要」とGK楢崎含めた主力残留、ジュロブスキー監督続投の方向性を示した。だが、闘莉王は「まだ僕の中で整理がつかない」。楢崎も「今は何も考えることができない」と去就について口を閉ざした。

 全体の50・1%を出資するトヨタ自動車・豊田章男社長(60=クラブ会長)は「チームが生まれ変わらない限り、スポンサー企業としての(トヨタ自動車の)出資も見直さなければいけない」と厳しく指摘した。Jリーグが開示した15年度のクラブ営業収益で、18チーム中4位の44億4600万円を記録した名門が大きな岐路に立たされる。

 愛称ピクシーことFWストイコビッチ(後に監督で10年J1優勝)や、名将ベンゲル監督(95年度に天皇杯優勝)ら偉大なOBや戦歴を誇る名古屋に、最大の試練が訪れた。【松本航】

 ◆名古屋グランパス 正式名称は名古屋グランパスエイト。トヨタ自動車が母体で91年Jリーグ正会員に。チーム名の「グランパス」は英語で名古屋のシンボル「シャチ」を意味する。ホームタウンは名古屋、豊田、みよし市を中心とする愛知全県。本拠地は豊田ス、パロ瑞穂。

 ▼「オリジナル10」の降格 93年のJリーグ創設時から参加の名古屋が初めてJ2に降格。「オリジナル10」とは、鹿島、市原(現千葉)、浦和、V川崎(現東京V)、横浜M(現横浜)、横浜F(99年に横浜Mと合併消滅)、清水、名古屋、G大阪、広島の10チーム。そのうち消滅した横浜Fを除いてJ2降格の経験が1度もないのは鹿島、横浜のみとなった。名古屋は10年にJ1優勝を経験。年間優勝を経験した後にJ2降格は東京V、磐田、G大阪に次いで4チーム目。