ヴィッセル神戸のスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(34)が移籍後3戦目でJリーグ初ゴールを決めた。ホーム・ジュビロ磐田戦の前半15分、初共演の元ドイツ代表MFルーカス・ポドルスキ(33)からパスを受けると、鋭いターンでDFを置き去りにし、GKもかわして右足で先制ゴール。全得点に絡む活躍で2-1の勝利に貢献した。スペイン代表(10年)とドイツ代表(14年)でワールドカップ優勝を経験した、英雄2人の年俸総額は推定約40億円。異次元のプレーで神戸は4位に浮上した。

 突き抜けた才能に時間は必要なかった。「ルーカス(ポドルスキ)レベルの選手と合わせるのは簡単なこと」とイニエスタは言い放つ。前半15分、右からポドルスキのスルーパスを受けると、イニエスタは鋭く右に反転してDF大井を置き去り。さらにGKもかわして右足を振り抜き、Jリーグ初ゴールを決めた。

 「本当に素晴らしいパスだった」。今夏にバルセロナから電撃移籍したイニエスタが言えば、昨夏から在籍するポドルスキも「だれもができるプレーじゃない。選ばれた、能力のある者ができる」と、世界一の融合を絶賛した。

 イニエスタは家族を迎えるためスペインに一時帰国し、5日に再来日したばかり。ポドルスキも左足骨折の離脱からの復帰戦で、2人の練習は今週合わせただけ。それでも長年連れ添った夫婦のように抜群の呼吸で好連係が生まれた。イニエスタは「コンビネーションは問題ない。いいプレーができた」と、初めてフル出場も果たした。

 「チームを変える」と合流直後から期待を現実にした。世界の頂点に君臨した選手でも偉ぶらない。写真で選手の顔、経歴も覚えて自ら話しかける。この日の後半、J2FC岐阜から移籍したばかりのFW古橋が初得点。その起点となったイニエスタは、古橋に「自分の良さを出すべきだ」とアドバイスしていた。「感激しました。ポジティブになれた」と古橋。影響力はプレーに限らず、早くもクラブ全体に波及している。

 今回は大事な家族を伴っての再来日。7月の来日時はホテル暮らし。暇な時間はゲームセンターで時間を費やし気分転換したが、今は大きな支えが日本にいる。住居はマンションに決めたが暫定的な措置という。来日会見で「日本の文化を学びたい」と発言。日本庭園に興味があり、庭付き一戸建てが希望。すべてにおいて日本に溶け込もうとする精神が、成功を招いた。

 「これからもベストなプレーを出せるようにやっていく。(攻撃を)組み立てるだけじゃなく、ゴールでも貢献していきたい」。イニエスタ-ポドルスキの世界超一流タッグは、これまでのJリーグにない可能性を示した。この2人で率いる神戸が、台風の目に浮上してきた。【実藤健一】