奇跡の逆転初優勝へ、川崎Fが全員攻撃の「予行演習」を行った。主力組のみで練習した3日、1時間ぶっ続けでサイド攻撃からのシュート練習を繰り返した。優勝には6日の東京Vとの最終戦で3点差以上の勝利が最低条件と状況は限りなく厳しいが、鹿島が逆転優勝した昨年のように最終節まで何が起こるか分からない。川崎Fは望みがある限り、全員攻撃でひたすら攻めまくる。

 センターバックの寺田が、左サイドから鋭いクロスをゴール前に送る。同じくセンターバックの井川も、飛び込んで思い切りよくシュートを放つ。「東京Vも残留がかかっている。きれいなサッカーはできない。球際の戦いになる。僕も前に行く」とDF伊藤。ポジション問わず、視線はゴール一点に向いていた。

 この日は午後に控え組が横浜FCと練習試合を行ったため、午前は主力のみの練習となった。そのため、いつもはフィールドプレーヤー26人で行うサイド攻撃の練習を9人で行い、ひたすらシュートを打ち続けた。単純計算でも練習の濃度は3倍。井川は「人数が少なかったから、攻撃の意識付けに良かったんじゃないですか」と話した。

 悲願の初Vには(1)勝ち点3差の首位鹿島が札幌に敗れ、(2)勝ち点1差の2位名古屋が引き分け以下、(3)川崎Fが東京Vに3点差以上で勝つことが条件。鹿島が12点取られて負けるようなことがない限り、条件を満たせば奇跡は起こる。

 今季のリーグ戦で3点以上決めた試合は10試合で、最近10試合に限ると半分の5試合もある。ここ2戦連続で4発と攻撃陣が絶好調なだけに、決して不可能な数字ではない。高畠監督も「ロスタイムで2-0なら(GK川島)永嗣が上がることも、なきにしもあらず」と総攻撃作戦を示唆するなど、全員が「3点以上」と意識している。

 東京Vとは過去11回対戦し、1シーズンの最多得点者は05年の2試合で3点決めた寺田。「たまたま固め打ちしただけ。過去は気にしません」と笑うが、3月9日の開幕戦で東京Vからゴールを奪ったのも同じDFの森。東京Vがなりふり構わず引いて守り、自慢の攻撃陣が空転しても、意外な男の1発で奇跡が起こるかもしれない。【村上幸将】