<天皇杯:G大阪1-0鹿島>◇準決勝◇29日◇エコパ

 遠藤弾で3大会ぶりの優勝に王手!

 G大阪の日本代表MF遠藤保仁(32)が、天皇杯3戦連発となる決勝弾を決めた。前半23分にショートコーナーからのクロスが、そのままゴールへと吸い込まれた。苦しみながらも1点を守りきり鹿島に勝利。リーグ戦でJ2に降格したクラブが、同年度の天皇杯を制すれば史上初になる。4度目の優勝へ、来季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得へ、元日の決勝(国立)は、37大会ぶりの制覇を狙う柏と対戦する。

 夢を乗せたボールは、きれいな放物線を描きながらゴールへと吸い込まれた。蹴った遠藤でさえ、まさか決まるとは思っていなかった。前半23分のショートコーナー。二川からの折り返しを、右足ダイレクトで上げた。約30メートル、冬空に高く、高く、浮かんだボールは、結果的に相手の意表を突く形となり、そのままゴールネットへ。この1点を守りきり、09年度以来3大会ぶりの優勝に王手をかけた。

 遠藤

 あれはクロスです。(得点を)狙ってないです。飛んだコースが良かったので、途中から「入るかも」とは思いましたけど。たまたま入っただけですけど、良かったです。いいボールを蹴れば入るかも、とは思っていましたから。

 泥にまみれた今季、ようやくチームがまとまった。最少得点での勝利は、リーグ戦では1度もない。それだけ内部は混乱し、守備は崩壊状態だった。数々の修羅場をくぐってきた遠藤でさえ、重圧に押しつぶされ、自分を見失った日もあった。だがJ2に降格して初めて、気づいたことがある。それは、サッカーを楽しむこと-。この日はトップ下で先発。エースFWレアンドロが出場停止のため、時には前線の家長と2トップに近い形になった。攻撃も、守備も、自由に動き回った。まるで鹿児島・桜島の火山灰を浴びながらボールを追い続けた少年時代のように…。久しぶりに、サッカーを心から楽しんだ。

 遠藤

 (天皇杯で)勝ち続けることによって、自信も生まれてくる。いい状態になってきたと思います。もともと力のあるチームですから。普通に戦えば、結果はついてくる。全員が高い意識になってきましたし、僕自身もゴールに近い位置にいるので、状況を見ながら自由にやっている。

 年が明ければ33歳になる。それでも衰えは知らない。円熟味に加え、若手のように強く、走れる体が備わった。練習メニューにヨガを取り入れたことで、故障がなくなり、連戦にも耐えられる持久力もついた。「股関節とか、その周りの柔軟性が良くなった。いい方向にいっていると思います」。屈辱にまみれたリーグ戦に、日本代表、そして天皇杯…。今年もまた、長期離脱することなく、全速力で走り続けてきた。

 ここまで来たら、優勝しかない。J2に降格したクラブが同年度の天皇杯を制すれば、史上初の快挙となる。J2で地方行脚の来季に、アジアへの転戦が加われば当然、過密日程になる。それでも目指す道は1つ。2部リーグからのアジア制覇-。遠藤が見る2013年の正夢は、果てしない方がいい。【益子浩一】

 ◆G大阪の天皇杯

 過去3度優勝。前身松下電器時代の90年度に初優勝し、西野監督時代の08、09年度に2連覇を飾る。J発足後は今回で20大会を数え、うち11度でベスト4以上に進出するなど「冬将軍」の異名を持つほど天皇杯に強い。