横浜が、「省エネ」で4カ月ぶりに首位に返り咲いた。試合中にプレーが途切れた時間を除いた実際のプレー時間である「アクチュアル・プレーイング・タイム(APT)」で、横浜の1試合平均はJ1最短の51分16秒。最長の広島(60分54秒)とはおよそ10分も差がある。90分の試合で39分もプレーが止まっている計算。この「休み時間」の長さが、スタメンの平均年齢が30歳を超えるチームの夏ばてを防ぎ、7月13日の大宮戦から5勝1分けの6戦負けなしだ。

 Jリーグは観客の観戦時間を大切にする趣旨に立ち、その1つの指標となるAPTの増加を目指している。ただ、APTは広島や浦和などポゼッション重視のチームが長くなり、鳥栖など堅守速攻型は短くなる傾向がある(イラスト参照)。ボール保有率に比例する。だが、横浜の保有率は平均55%で、浦和の57%に次ぐ2位。リーグで唯一2つの数値が反比例している。

 そうした珍現象を引き起こしているのが、MF中村俊輔(35)のしたたかさ。元日本代表の司令塔が中心になってパスを回し、呼吸を整えながらマイペースで試合を進める。もちろん大事な局面ではハードワークを惜しまないが、FKやCK時には中村がゆっくりと間をとりながらボールをセットし、遅延による警告を受けない程度に「休憩」を挟む。だから高いボール保有率を記録しながら、実際のプレー時間は減少する。この矛盾したデータが、ベテラン軍団の試合巧者ぶりを際立たせている。【石川秀和】