今回は少しだけ真面目なお話を。連日、W杯をテレビ観戦していて、これほど「捨て試合」のない大会は珍しいと感じている。下馬評の低かったチームであっても、強豪国と互角の戦いを繰り広げている。

 コスタリカは、ウルグアイ、イタリアというW杯優勝経験国を連破し、チリは前回王者スペインを1次リーグ敗退に追いやった。オーストラリアは2-3と、オランダをあと1歩のところまで追いつめた。いずれも手に汗握る熱戦だった。

 そんな中で強烈な印象として残ったのがメッシ(バルセロナ)率いるアルゼンチンに冷や汗をかかせたイラン代表の試合だ。名古屋でも指揮を執ったケイロス監督のもと、徹底的に引いて守って、メッシやアグエロ(マンチェスターC)、ディマリア(Rマドリード)ら世界トップの攻撃陣に仕事をさせなかった。

 一方、ボールを奪えば電光石火のカウンターでデヤガ(フラム)らがゴールを狙った。最後は後半ロスタイムにメッシの決勝左足ミドルを食らったが、スタジアムではイランの健闘をたたえる大歓声が起こっていた。

 結局、イランはアルゼンチン戦で力尽きたのか、続く1次リーグ最終戦のボスニア・ヘルツェゴビナ戦には1-3と完敗。日本とまったく同じの、1分け2敗で大会を去ることになった。だが成績は同じでも、イランの方がはるかに健闘したイメージを持っているファンは多いのではないだろうか。

 元米国代表で、現在もトットナムでプレーするGKブラッド・フリーデル(43)が先日、英BBCのラジオ番組に出演。面白いことを言っていた。

 フリーデル どの大会にも戦術的なトレンドがある。今大会は攻撃的なチームが多いから得点が多く生まれているのだろう。でもイラン代表を見てほしい。彼らはアルゼンチンを相手に死ぬ気で守っていた。それは、そうしなければならないからだ。1対1で比べたら、イランの選手でアルゼンチンの選手に勝っている選手はだれもいない。でも集団としてプレーすれば、勝ち点が取れそうなレベルで戦うことができる。だからW杯では信じられないことが起こるんだ。

 戦い方というのは、両者の力関係で決まってくると思う。相手が強ければ、守備的な戦い方ができるチームでないとやられてしまう。はたしてコロンビアと日本を比べ、個の力で勝っている日本の選手は何人いたのだろうか。いないのであればフリーデルが言うように、アルゼンチン戦でのイランのような戦い方は必然となってくる。「自分たちのサッカー」を押し通すだけでは、結果がついてこないのは当然だろう。