5月24日に開幕する全仏オープン(パリ)で、悲願の4大大会制覇が見えてきた。世界5位の錦織圭(25=日清食品)が同66位のアンドゥハール(スペイン)に6-4、6-4の1時間34分で勝ち、63回の伝統と格式を誇る欧州の赤土で2連覇を達成した。同大会での2連覇以上は10人目。錦織の優勝はツアー通算で9勝目となり、日本選手のツアー優勝回数としては、並んでいたクルム伊達公子を抜き、単独最多となった。

 2年連続で美酒のシャンパンを浴び、プールにも飛び込んだ。ビショビショになりながらも、その表情は、昨年にも増して誇らしげだった。「この勝利の意味は大きい。すごく自信になる」。最初の優勝は無欲の勝利だったかもしれない。しかし、2連覇は真の強さだった。

 錦織は連覇への重み、そして相手は地元での初優勝がかかる。ともに背負うものの重さで、動きがぎこちなかった。両セットともに、第1ゲームで自分のサービスゲームを落とした。「緊張もあった」。嫌な滑り出しで、第2セットは2-4とリードも許した。

 加えてアンドゥハールには嫌な思い出がある。2年前のマドリードオープン3回戦でフェデラーを破った後に対戦したのが、当時100位以下のアンドゥハールだった。誰もが楽勝を予想していた対戦で、足をすくわれた。ただ、この日は「悪いながらも勝利できたのが強くなった証拠」と、2年間の成長を証明してみせた。

 赤土は体力が必要で、あらゆるショットを駆使しなければ勝てない。178センチのアジア男子が2連覇を達成するなど、数年前までは想像すらできなかった。63回の歴史の中でも、2連覇以上は錦織を含めてたったの10人しかいない。また、今大会と全仏を同年に制した選手は8人。今年こそ、その流れに乗りたい。

 5月3日から今季赤土初のマスターズ大会、マドリードオープンが幕を開ける。昨年は今大会の勢いで決勝に進み、ナダルを6-2、4-2まで追い詰めた。股関節のケガが悪化し、途中棄権を余儀なくされたが、今年はその雪辱に燃えている。マドリードの翌週には、昨年欠場したマスターズ大会のローマが控え、同24日には赤土最高峰の大会、全仏が幕を開ける。

 「どれだけできるかワクワクしている」。目標のマスターズ初制覇と悲願の4大大会優勝。この日の優勝で、優勝回数が日本歴代最多となったが、すでに日本の枠を飛び出している錦織にとって、その目には世界制覇しか見えていない。