元世界女王の浅田真央(25=中京大)が迷路にはまった。ショートプログラム(SP)3位から逆転を狙ったフリーは、ジャンプのミスが続き125・19点、合計194・32点。最多5度目だけでなく、出場7度目で初めて表彰台まで逃した。1年間の休養から復帰後、ここ2戦は低迷。心理面の問題点を挙げ、「空回りしている」とした。

 浅田が眉間にしわを寄せていた。約5分間の取材時間に「空回り」という言葉が3回も出た。問題点をいくら探しても、すべてその1つの言葉に行き着く。それ以外に原因を求められない。行き詰まり感が発言の端々にあふれていた。「心と体と技術と3つそろわないといけない。いまの私にはすべて足りないんじゃないかなと思います」。必死に自分と向き合っていた。

 歯車は最初から狂っていた。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の着氷が回転不足で乱れると、片手をついてこらえるのが精いっぱい。続く連続3回転は2回転フリップの単発に。「自分のタイミングとリズムと気持ちが合ってない。全部、失敗したくないという気持ちが強すぎるのかな」。その後も続いた跳躍の乱れ。それを「空回り」と呼んだ。

 2週前のNHK杯から2戦続けて低迷した。1年間の休養から復帰したジャパン・オープン、先月の中国杯と好調さが際立ち、ブランクの影響を感じさせなかっただけに、思わぬ不振に当人も困惑する。復帰直後に頻繁に思ったのは「自分が望んで復帰したんだから」という心理。強制されたわけでもない。だからどんな苦難があろうとも言い訳はしない。NHK杯の後も、1つの泣き言も周囲に漏らさなかったという。

 いまはその覚悟が強すぎるのかもしれない。「やらなきゃという気持ちが強すぎるのかも」。どこか義務感が発生し、「スケートを楽しめていた」復帰2戦の躍動感が失われた。佐藤コーチは「ブランクが微妙に影響はしているでしょう。自分で自分に裏切られるということ」と説明した。

 復帰シーズンにこの舞台まで進んだことは客観的には明るい材料に思えるが、本人から前向きな言葉は1つもなかった。女子では最高難度に上げている両プログラムの構成についても「それも考えなくてはいけない」と変更の可能性まで言及した。次戦の全日本選手権まで2週間あまり。立て直し方が問われる正念場になる。【阿部健吾】