フィギュアスケート男子の宇野昌磨(21=トヨタ自動車)が、異例のメインコーチ不在で今季を戦う覚悟を示した。

15日、愛知・豊田市の中京大アイスアリーナで行われている全日本強化合宿が公開され、宇野らがスケーティング練習や表現トレーニングを行った。6月に山田満知子、樋口美穂子両コーチが指導するグランプリ東海クラブを卒業。いまだにメインコーチは決まっていないが、新シーズンへ前向きな姿勢を貫いた。

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宇野の表情からは不安はみじんも感じられなかった。「おそらく僕1人で今シーズンをやっていくんじゃないかと思います」。

18年平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)銀メダリストは過酷な道を選んだ、かと思われたが「僕は1人でやれると思っている。1人だからこそ、今まで以上にうまくならないといけないと思う」と言い切った。

6月に突然、5歳の時から指導を仰いできた山田、樋口両コーチからの卒業を発表。その後の約1カ月間、ザギトワ(ロシア)らを指導するロシア人のエテリ・トゥトベリゼ・コーチの夏季合宿に参加した。海外拠点がささやかれたが「もともと合宿で行くつもりだった」と移籍の予定はなかったと説明した。

親しんだ両コーチを離れたことについては「満知子先生から『離れた方がいいんじゃないか』と持ちかけていただいた」と明かした。コーチと選手の関係がいつしか家族に近い関係に。だからこそ、これまでと違う環境作りを互いに望んだ結果だった。

今後は中京大を拠点に練習に励む。月に数回、本田武史氏にジャンプコーチを務めてもらうというが、同氏はメインコーチではないと断言。9月にはスイスで約2週間の合宿を予定していて、ステファン・ランビエル氏から教えを請うという。それでも「メインコーチを慌てて探すつもりはない」とどっしりと構えた。

今後メインコーチが決まる可能性についても「今年は多分決まらないんじゃないかな」とあっけらかん。試合への同行者についても「多分、誰もいない。海外は連盟の人が可能だけど、問題は全日本」と笑う。全日本選手権での「キス・アンド・クライ」に、まさかの1人で登場の可能性もある。それでも「所属がないからこそ、いろいろな所を見られる」。

1人になったからこそ、思うがままに成長の場を求めていく。【佐々木隆史】