フィギュアスケートの浅田真央(22=中京大)は7日、都内でグランプリ(GP)シリーズと第6戦となるNHK杯(11月23~25日、宮城)の会見に出席した。第3戦の中国杯(11月2~4日、上海)が初戦となるが、尖閣諸島の領有権を巡って日中関係が悪化する中での大会にも、「気にしてません」と平静を貫く姿勢。6日のジャパン・オープンでは久々に会心の演技も披露。今季のテーマには「向上」を掲げ、中国でさらなる手応えをつかみにいく。

 波風立つ日本と中国の領土問題による対立にも、浅田の心にさざ波が立つことはなかった。中国で滑ることに、公式の場で初めて言及。「あまり考えていなくて、(日本スケート)連盟の方が送って下さるので、そういうことは気にしていなくて」。質問にはさらりと、ためらいなく答えた。

 周囲は騒々しさを増してきている。同連盟の橋本会長は先月、中国杯に出場する日本の選手、スタッフに警備員を帯同させることを決定。警備の必要人数の把握なども含めて、事前調査を行うことも決断した。従来の国際大会とは様相が異なる環境で戦うことは確実だが、心配はしていない。

 競技そのものに不安がないことが大きい。今季初戦の6日のジャパン・オープン。フリーの演技で、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)なしで、122・04点の高得点をマーク。「久しぶりに好感触が試合で出た感じです」と手応えをつかんだ。代名詞の大技は封印したが、「今のところは入れる構成では練習していない」という。こだわりをいったん我慢できる、精神的な成長もみせる。

 会見ではフリップに「向上」と記した。ジャンプの不振から抜け出せず、3月の世界選手権で6位に終わるなど低迷した昨季。再起へ、周囲に惑わされず上へ向かう。「落ち着いてGPファイナルを目指したい。去年より精神的にも技術的にもしっかりとしていると思います」。そう言いきれる自信を確信に変える、中国での戦いになる。【阿部健吾】

 ◆浅田真央とGPシリーズ

 トリノ五輪の05-06年シーズンから参戦。デビュー戦の中国杯で2位に入ると、2戦目のフランス杯で荒川静香らを抑えて初優勝を飾った。続いて東京で開かれたGPファイナルでは、当時の世界女王スルツカヤらを抑えて、15歳で頂点に立った。08-09年のファイナルで日本女子初の2度目の優勝を飾るなど、過去GPシリーズにはファイナルを含めて19度出場(棄権1度)し、8勝している。