V条件はこれですわ。85年の阪神日本一監督で日刊スポーツ客員評論家の吉田義男氏(88)が、ペナント争い佳境の首位阪神に緊急提言した。

残りは33試合で、14日ヤクルト戦からシルバーウイークを含めた2週間で11試合を戦う。逃げ切りにはここで貯金を16から20まで増やすことが必要と指摘。ヤクルトの村上、山田を警戒するのはもちろん、巨人、そして4位中日を侮らないよう求めた。

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ペナントレースにはいくつかの分岐点がありますが、阪神にとって“ここ”は1つの正念場です。14日からの11戦で「優勝」の2文字が鮮明に見えてくるぐらいの戦いをすべきです。

もっとも現場の矢野監督は腹では思っても口には出せないが、ここを乗り切れば頂点は見えてくるはずです。そのためには貯金「16」を、なんとしても「20」まで積み上げることですわ。それが逃げ切る条件とみてるんです。

ヤクルトは山田、村上をいかに抑えるかに尽きるんじゃないでしょうか。前回奥川を打てなかったといっても、いい当たりが正面を突いた。阪神も近本の働きは大きいし、中野と1、2番が機能しているので、あとはクリーンアップです。

サンズの状態は気掛かりだが、ロハスよりサンズです。打線は「3番」がカギになる。大山の打順を上げてきたが、首脳陣がサンズ、マルテ、大山で固めたクリーンアップを貫けるかどうかもみてます。

巨人は菅野で奇跡的に勝ちました。ジャイアンツの戦いは紙一重、これが精いっぱいですわ。ピッチャーがもろ弱すぎる。それにここにきてもストッパーのやりくりが続いて苦しい戦いですわ。

阪神は岩崎、スアレスがパーフェクトなのが最大の強みといえる。心配な点は、陰りがみえている先発陣です。青柳、秋山に、ガンケル、西勇も入れて引っ張ることで、いかに後ろにつなぐ戦いに持ち込めるかです。

新人の佐藤輝についても一言いっていいですか。チームがここまで戦えたのは佐藤輝の存在が大きい。今年も阪神戦を全試合見てきましたが、23本のホームランは誰かに教えられて打ったわけではありませんで。

151三振したって、三振も凡打も一緒違いますの? でもボールを振らない技術を身につけるのは、プロでメシを食っていく上で大切なことです。10日間で上に上がってくるのかと思ったが、今度は自分の力ではい上がらなあかんし、また上げなあかんでしょうな。

さて、いきなりヤクルトに負けてるようでは話にならんが、11戦のカギは5試合を戦う中日です。どう転んだって上には追いつかないし、捨てるものもない。大野雄、柳ら投手力がそろって不気味です。

1度は3位に下がったがよく踏ん張ってきた。今月3日から2勝1分けに持ち込んだ巨人3連戦はターニングポイント。でも、あれは巨人から崩れていった自滅でしたわな。

周囲は3位ヤクルトまでたった3・5ゲーム差と言いますが、これなかなか縮まりませんで。これからしびれるような場面に直面し、おそらく監督も初めて勝つことの怖さを感じるでしょう。今度は自分たちの力で勝ちをつかまんとあきません。勝負はここからでっせ。【取材・構成=寺尾博和編集委員】