阪神が1点差を逃げ切った。今シーズンの対広島に喫した9敗のうち、5試合までが1点差負けだが、この夜は競り勝ちだった。

梨田 どちらも消化不良のような内容だが、岩崎が久しぶりにいいボールを投げたのはホッとしたことだろう。本人も自信をもてたに違いない。また阪神ベンチの継投はベストタイミングだった。

7回。西勇が広島4番のマクブルームを空振り三振にとると、左の渡辺にスイッチし、坂倉、小園の後続を断った。

梨田 あそこは渡辺が打たれる、打たれないの結果はさておき、ベンチの判断はドンピシャリだ。本塁打を浴びた坂倉から左が並ぶし、その裏は西勇に打席が回る。西勇にはそこまでの信頼もないはずだ。渡辺の中継ぎとしての長所を引き出す意味でも、矢野監督の采配がさえた。それは北條、山本らの起用にもいえることだった。

広島は対阪神3戦3勝だった床田が、2死から近本、佐藤輝に連打、続く大山に四球を与えて満塁になった。ちなみにこの試合まで床田が3試合計23イニングで与えた四球は1個。北條が同点打、山本の当たりは小園の二塁寄りをスルスルと抜けた。

梨田 阪神は近本がツーアウトからヒットを打ったことで勢いづいた。そしてポイントは床田が大山に四球を与えた場面だ。広島にとっては2点リードしているし、床田の力量と大山の調子を考えれば四球で歩かせる必要はなかった。むしろ満塁にするほうがいやだったはず。それなのに床田は勝負を避けているようにみえた。北條は開き直って打てるし、山本も小園が止めていればという当たりだが、いい働きになった。

阪神は広島、ヤクルト、巨人と上位チームとの対戦が続く。

梨田 初戦が雨天中止でなければ西勇から藤浪、桐敷が先発予定の3連戦だった。あとの2人が未知数だから、2連戦になった上にカード初戦に勝てたことが大きい。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】