オーストラリア戦での注目といえば、なんといっても佐々木朗がどんなピッチングをするかに尽きるだろう。ポテンシャルだけを見れば日本球界NO・1。しかし「滑る」と言われるWBC球への対応力は未知数だけに、どういうピッチングになるか楽しみにしていた。

結果は4回を投げて59球、4安打無失点に切り抜けた。ただ、佐々木朗本来のピッチングができていたかと聞かれれば「そうではない」と答えるしかない内容だった。

真っすぐの球速は150キロ台後半が出ていた。初回こそ真っすぐは高めに浮いていたが、徐々に制御されていた。ただ、フォークのキレがいつもの出来ではなかった。

本人も分かっていたのだろう。全59球のうち、フォークは24球で約4割。意図的にフォークを多めに投げ、練習していたように感じた。

3回までで空振りが取れたフォークは1球だけ。やはり、思い切ってリリースすると、すっぽ抜ける怖さがあったのだろう。打者の立場から言うと、リリースで力をセーブする変化球は対応しやすい。空振りが取れなかった理由だと思う。

ただ、4回こそフォークで3球、空振りを取って制御できる兆しは見えた。WBCは来年の3月だけに、それまでにはもっと良くなっていると期待が持てる内容だった。

問題は他のピッチャーとの兼ね合い。今回のオーストラリア戦の2試合で、先発候補に挙げられる今永、戸郷、そして今試合で2番手で投げた高橋奎が、圧巻のピッチングを見せた。

他にもメジャーからダルビッシュや大谷がいるし、山本由など、実績十分のピッチャーがいる。「滑る」と言われるWBC球はヒジへの負担も大きく、球数制限があるとはいえ、登板間隔を空けなければならない佐々木朗の起用法は難しくなる。

本来のピッチングさえできれば、実力は文句なし。多少、起用法が難しくなっても大きな戦力として計算はできる。ロッテで入団時から佐々木朗を見ている吉井コーチがどうやって力を発揮できる環境を作れるかが、大きなカギを握ると思う。(日刊スポーツ評論家)