いい投手とはどういう投手なのか? とてもアバウトな問いにはなるが、中日高橋宏と広島森下の投手戦には、その答えがあるような気がした。両投手とも持っている力を考慮すれば、それほど調子がいいという感じはしなかったが「勝てる投手だな」というピッチングを見せてくれた。
最初に今試合で規定回数に達した高橋宏の投球を振り返りたい。2回2死三塁、打席には8番の会沢だった。カウント3-1になり、首を振って投げた直球は153キロの真っすぐだった。首を振る前の球種が何だったか気になるが、会沢は打ってこないだろうと思って首を振ったのだろう。ややシュート回転した甘いボールだったが、見逃しのストライク。フルカウントからはいいところに落とすスプリットで三ゴロに打ち取った。
この場面、次の打者は投手の森下だった。バッティングがいい森下とはいえ、打者有利のカウントから無理して会沢と勝負しなくていいと思っていた。それでも勝負したのは、次のイニングで1番から攻撃をさせたくなかったのだろう。3-1から打ち気のない会沢の心理を見越して大胆にストライクを取り、フルカウントで打ち気になってからはボールゾーンへ。無理に勝負にいく必要がないにも関わらず、こうした投球ができるのは力がある投手がなせるピッチングだろう。
森下にも、「投手は投げるだけではない」という気骨を感じた。高橋宏のもくろみ通り、3回は投手の森下から打順が始まった。そしてカウント1-2から左肘に死球を受けたが、打ち気でなければ避けられたスライダーだったと思う。投手であり、あまりに打ち気になるのも危険だが、こうした闘争心は大事。長い間、走者に出てホームを踏んだが、ベンチに帰って休む暇がほとんどないままマウンドへ。疲れを心配したが3者三振のピッチングを見せた。
高橋宏にしても、逆転した5回は3者凡退でピシャリ。森下も高橋宏も、勝ち越したイニングの後は、完璧な投球で締めくくっている。球威のある高橋宏は、送りバントにも「簡単にやらせない」という気迫があった。防御率がいいのも納得できる内容だった。両投手ともに言えるが、このクレバーさと勝負どころでのセンスの良さは、他の投手のお手本になるだろう。
森下が逆転されたのは、矢野のエラーが絡んでのもので、決して責められるようなピッチングではない。中日に対して広島の相性の悪さが出たような試合だった。見応えある投手戦を堪能させてもらった。(日刊スポーツ評論家)




