中継ぎ陣の試合前練習が始まる30分前。西武の2年目左腕、野田昇吾投手(24)はブルペンで1人、黙々と腕を振る。左手にタオルを握り、股割りした状態からのシャドー投球。「上体だけだとボールをコントロールできない。たとえ疲れた時でも、下(下半身)をしっかり使えるようにしないとダメ。左の股関節を前に押す意識でやっています」。

 今季は開幕1軍入りも、3度の2軍降格を経験。「去年は厳しい場面でも投げさせてもらったんですが、今年は開幕から仕事が出来ていない」と8月22日の昇格後、自らこの練習を始めた。下半身への負荷も含め、疲労が蓄積してパフォーマンスが低下するリスクもあるが「残り20試合を切って、みんなきついのは当たり前。今やっておかないと。つかみかけている感じがあるんです。やらないと、逆に不安なんです」。マウンドに上がれば勝負に集中するだけ。フォームに気はかけられない。覚悟を決めて「体に覚えさせる、なじませる」ことに、全力で取り組んでいる。

 今季29戦目の登板となった9月5日ロッテ戦。1点リードの7回2死二塁で先発十亀の後を受け、2番手でマウンドに上がった。中越えの二塁打を許し同点とされたが、直後に打線が勝ち越し。プロ初勝利が舞い込んだ。念願のウイニングボール。記録上は0回1/3を無失点も、うれしさより苦さが残った。「素直に喜べません。十亀さんの勝ちを消してしまったので、申し訳ない気持ちの方が強いです。次はしっかり抑えて、本当に勝ちたい」。

 心から喜べるように、チームの白星に貢献出来るように、鍛錬を重ねている。「ここからの上位争いの大事な場面で使ってもらえるように、やれることはやって、ポジションをつかみ取らないと」。シーズンも佳境。少ない残り試合の中でも、己の居場所を何としてもつかもうと、必死に戦っている男たちがいる。【西武担当=佐竹実】