苦しい経験をしてきたからこそ、土壇場で踏ん張れる。

そう思わせてくれる選手が今、阪神の1軍に集結している。湯浅京己投手(22)、渡辺雄大投手(30)、石井大智投手(24)、片山雄哉捕手(27)。共通点は独立リーグ出身であるということだ。

「独立でプレーした選手は、少なからずどこかで大きな挫折を味わって、独立リーグで挑戦していると思う。そういう挫折を味わったことがある選手は、絶対強い。みんなで阪神の勝ちに貢献できればいい」

5月のある日、練習終わりの渡辺から聞いた言葉に、彼らの強みが凝縮されていると思う。

渡辺はBC・新潟からソフトバンクに入団。戦力外となり今季から阪神に加入した。ここまで17試合で防御率1・74。左のワンポイントとして欠かせない戦力になっている。逆境に負けない不屈の精神は、独立リーグ出身であることと無関係とは思えない。

「8回の男」を任され、21試合で防御率0・90とブレークしている湯浅もそうだ。福島・聖光学院では成長痛による腰痛が出た影響で記録員を務めたこともあった。それでもBC・富山で野球を続け、18年ドラフト6位で阪神に入団。度重なる故障に悩まされてきたが、プロ4年目で頭角を現してきた。

プロ2年目の石井は、秋田高専から四国IL・高知でプレー。オフにはショウガの収穫バイトなどで資金をためる日々。西アフリカ・ブルキナファソ出身のサンフォ・ラシィナ外野手(24)らとともに、グラウンドではなく農家の一角で汗を流す1日もあった。5月20日巨人戦(甲子園)では延長12回無死一、二塁で登板。ブルペンに残る投手はゼロ、自身が投げ切らないといけない状況で「アクシデントだけは起こさないように」と強い心で3つのアウトを奪った。7試合で防御率2・00。イニングまたぎなど、場面問わずフル回転する覚悟はできている。

湯浅と同じ4年目の片山はBC・福井でプレーした。育成契約からはい上がり、今季1軍に初めて昇格し、初出場した。5月25日楽天戦では、石井と独立リーグ出身バッテリーを組み2回無失点。2軍戦ではチーム事情から三塁を務めたこともある。「かっこいいプレーはできないからさ。体で打球を止めてなんぼ」と泥臭く戦う姿に、こちらの胸も熱くなった。

どんな状況でも野球にしがみついてきた執念は、チームが最下位に沈む今、大切なスピリットの1つだと思う。「雑草魂」全開で戦う姿を何度でも見たい。【阪神担当=中野椋】