西武高橋光成投手(25)にとって、交流戦は3戦3敗と悔しいマウンドが続いた。ただ新しい発見、刺激もあった。「勉強になりました」という経験がある。

それはマウンド上ではなかった。普段は立つことのない場所。バッターボックスでの出来事だった。「あの1球は。絶対にボールだと思ったんですよ」と回想する。

あの1球とは…。6月3日ヤクルト戦(神宮)。第1打席にある。その2ストライク目を取られたヤクルト小川の外角低めの144キロ直球。右打席の高橋は自信を持って見送ったが、ストライクだった。たしかにベースの上を通過していた。もちろん投手として、外角低めにきちっと投げきる大切さは分かっていたが、打者目線を知ると、より実感を持って感じられた。「バッターは素人同然ですけど、本当にびっくりしました」。ピッチングの基本とも言われる「外角低め」。その意識が高まった。

2年連続の開幕投手。言葉にはエースの看板を背負う意地もにじむ。「自分は長いイニングを投げたい。中継ぎのみんなに休んでもらいたいですし、そういう気持ちで毎試合投げている」。今、チームは水上、平良、増田の勝ちパターンの救援陣が防御率0点台。1点でも勝って6回をしのげば、勝利の可能性はぐっと高まる。だが、できるだけ中継ぎは休ませてあげたいとの心意気にあふれる。

まだ今季は完投こそない。ただ、80回1/3はリーグトップの投球回。開幕から中6日で毎週金曜日に投げ続けている。ローテーションに穴を空けない。どんなに調子が悪くても6回までは投げきる。

安定感はあるが、もどかしさもある。4勝6敗。黒星が先行する。3日のヤクルト戦も7回1失点と好投も、チームは0-1で敗れた。唯一、失った1点はヤクルト先発小川のソロだった。「毎試合いい投球をして勝ちにつながるようなピッチングをしたい」。勝ちきれるよう進化を遂げた時、エースのステージは、もう1段上がる。安定感の先にある絶対的な存在になる。【西武担当 上田悠太】