「気迫」を込めた投球だった。ソフトバンクの5年目右腕、泉圭輔のピッチングから、そんな気概がヒシヒシと伝わってきた。

シート打撃初登板。先頭の新外国人アストゥディーヨへの初球、153キロの直球を投げ込んだ。カウント2-2から、140キロのフォークで空振り三振に斬った。打者7人に30球を投げ3本のヒットを許したが、FA加入の嶺井からもフォークボールで空振り三振を奪うなど、マウンドで躍動した。ブルペン陣のサバイバル戦もゴングが鳴ったばかりだが泉には少しばかり安堵(あんど)感もあったはずだ。

忘れられない、いや、忘れてはいけないあの1球…。昨年10月2日。シーズン最終戦でロッテに敗戦。泉は山口に痛恨の逆転3ランを浴びた。V逸の責任を背負い、背番号「53」はグラウンドで泣き崩れた。宮崎キャンプイン前日。全体ミーティングで訓示した王球団会長は、話の中で突然、言った。「泉! 名前出して悪いんだけどさ、あの3ランは痛かっただろう?」。びっくりした泉は小さく「はい」とだけ答えるしかなかったが、王会長は続けた。「どんな場面でも低めに投げるということを絶対に忘れちゃいけないんだ」-。弱気だったのか、不安げだったのか。昨オフも自問自答の日々ではあった。今キャンプのブルペンで甲斐から「自信なさげに投げるな」と指摘を受け、斎藤学投手コーチからも「打者を見下ろすように」と言われた。先輩やコーチから背中を押されるまでもなく、「屈辱の過去」に終止符を打つために「変化」を誓っていた。

「いい感じで投げることができました」。初球の153キロは、この日登板した5投手で最速だった。宿舎に戻るバスに乗り込む泉は笑顔だった。もちろん、これからが厳しい戦いのスタートだということも、しっかり分かっている。

【ソフトバンク担当 佐竹英治】

22年10月2日、ロッテ戦の6回、泉は山口に逆転3点本塁打を浴びる
22年10月2日、ロッテ戦の6回、泉は山口に逆転3点本塁打を浴びる