膨れ上がった期待とは裏腹に、背番号5はやるべきことだけを見ていた。
5日のDeNA戦(横浜)、阪神近本光司外野手(28)は、5回終了時点で4打数4安打と打ちまくっていた。四球を挟み迎えた9回の第6打席。入江の内角高め152キロを打ち返し、鋭い当たりの中飛で試合を終えた。
ヒットが出れば5打数5安打だった。横浜スタジアムの虎党も熱い視線を送っていた。3打数無安打で迎えた最終打席に「1本出したい」と思うのは、想像できる。では、4安打して迎えた最終打席では、どんなことを考えていたのか。
6日の試合前、同球場の室内練習場から出てきた近本は、汗だくになりながら「そら、今日につなげるためやろ」とつぶやいた。そこから球場出入り口まで、70メートルほどあっただろうか。歩きながら「5安打目の欲を出さないと、意味がない。それも自分のやりたい打撃をやって、なおかつ、それでどうやってヒットを打つかやろ」と言った。
4打数4安打で最終打席を迎えることは、シーズンを通してでも、決して多くない。その時にしか感じられない空気、感覚があるのだろう。そこであえて、「5打数5安打」を狙い、自身にプレッシャーを与えていたといえる。たとえ凡打に終わっても、その質は高く、次の戦いにつながる1打席になるはずだ。
そして、この「6打席目」の“答え”は、すぐに出た。6日のゲーム、3回の左前打で12試合連続安打とし、新人から5年連続100安打に到達。さらに二塁打も放った。4打数2安打で3連戦ラストゲームを締めた。
この5年間で見ても、自身87試合目でのシーズン100安打到達は22年の81試合、最多安打のタイトルを獲得した21年の84試合に次いで、3番目の早さ。右肋骨(ろっこつ)骨折による離脱はあったが、極端に調子を落とさず、安打を重ねているといえる。
どんな打席も成長への糧に変えようとする姿勢があるから、コンスタントに打ち続けられる。残り45試合、無駄な打席は1つもない。【阪神担当 中野椋】




