令和になって初めての夏。気になる野球人の今を伝えます。

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間違いなく令和のロッテを担う男は今、ファームの拠点である武蔵浦和で鍛錬を積んでいる。

安田尚憲内野手(20)は今季、イースタン・リーグ全69試合に4番で出場し、打率2割5分6厘、リーグトップ44打点、同2位9本塁打の成績を残す(1日現在)。打点、本塁打は常にリーグ上位を争う。井上や角中ら、1軍で4番に座る主砲がファームに来ても定位置から動かず、結果を残している。

5月15日、イースタンリーグの試合前に日本ハム清宮(右)と談笑するロッテ安田
5月15日、イースタンリーグの試合前に日本ハム清宮(右)と談笑するロッテ安田

「ファームでできることは、しっかりできている。『日々成長しているな』というのは、感じることができてます。いつ上に呼ばれてもいいように、しっかりやり続けられるように、やっていきたい」

心技体。準備は整っているように映る。しかし井口監督は「将来の主軸を打たないといけない選手。中途半端に上げる気はない」とぶれない。同期入団で同タイプのヤクルト村上がブレークする中、対照的な道を歩む。どちらが正解ではない。目指す終点が同じで、ルートが違うだけだ。

安田は道のりを修正している。2月の対外試合では、12球団断トツの45打数に立ち、3割1分1厘の成績を残した。3月のオープン戦で9打数無安打3三振。ここでファーム行きとなった。「1軍で使うつもりだったけど、開幕前に調子を落とした」と井口監督。じっくり…の方針に迷わず切り替えられるチーム事情が背景にあった。

三塁にはレアードがいる上に、万能型の鈴木もいる。方針が固まっている以上、この2人に割って入る期待を抱かせない限り、1軍はない。「やっぱりさすがだなと思いますし、でもこういう壁を越えていきたいと思いますね。自分はバッティングにおいても、走塁においても、守備においても、まだまだ負けています。プロはそんなに甘くないのでしっかり練習して準備したいと思います」。ロッテには健全な競争原理が働いている。

「あとは自分がどうするかだと思いますし、どうするかは自分次第だと思う。サボろうと思えば簡単にサボれますし、落ちるのは簡単なので、しっかり上を見て練習したいと思う」。今はただ力を蓄え、待つ。腹をくくって自分と向き合う中で、1つだけ決めごとがある。「考え続けることを、絶対にやめない」。プロに入る前から何より大切にしてきたルーツが、20歳にして漂う思慮深さと落ち着きを与える。

慌てる必要は何もない。パワーと野球脳を備えた令和を代表するスラッガーとして、安田が一気に跳ねる。【久永壮真】