甲子園は例年通りの活況をみせ、プロ野球は優勝争いのまっただ中。盛り上がる「男子」に対し「女子」の現状は? 3回で送る。

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女子プロ野球秋季リーグ戦、埼玉-京都のナイター取材のため、川口市営球場へと向かった。

試合開始は午後6時となるが、選手たちの「始動」は早い。午後1時に集合し、選手とスタッフ総動員で物販ブースの設営、入場口などに並べる机運び、看板設置などをテキパキとこなす。主力選手や「美しすぎる女子プロ野球選手」として有名な埼玉・加藤優外野手(24)も例外ではない。今季からリーグ全体の野手総合コーチに就任した元巨人の石井義人氏(41)もポロシャツ姿で黙々とビールケースを運ぶ。「慣れたもんですよ。選手は一生懸命やっていますし、初期に比べてレベルも上がって面白くなっています。とにかく1度でも見に来てもらえれば」と汗をぬぐった。

並行して、球場内では練習が行われる。打撃投手やブルペン捕手を抱える余裕はなく、ここでも選手同士が協力しあう。フリー打撃で使用する硬式球はひどく土に汚れているが、選手は生き生きとバットを振っていた。

開場の午後4時半を前に、熱心なファンが列をつくり始める。両チームから代表選手2人が、ハイタッチで出迎えてくれるためだ。NPBのオープン戦などでも同様の例はあるが、シーズン本番中に両軍の選手が対応するのは異例。キャリア6年目となる埼玉の今井志穂主将(24)も「ファンとの距離が近いのは魅力。スタンドのお客さんと一緒に戦う一体感があります」と話す。

試合は7回制。スピード感は男子に劣るが、実力は拮抗(きっこう)して展開も早く、2時間ほどで終了する。土日はダブルヘッダー開催で、試合後のファンサービスも充実する。この日は平日夜の開催で実入場者数は450人ほど。球場の空気は最後まで温かかった。

そんな熱戦は終わっても、選手たちの夜は終わらない。球場撤収の作業も総動員。投げ終えた投手もアイシングで肩肘を冷やしながら、できる作業をこなす。午後8時に試合終了も、開場撤去が終わり、夜空の下でミーティングが行われた時には、午後9時半を回っていた。想像以上にハングリーな世界だが「やっぱり野球が好きなことが一番ですかね」と今井主将。野球愛が女子プロ野球を支えている。(この項おわり)【鈴木正章】

勝利を喜び笑顔でポーズを取る埼玉の選手たち(撮影・鈴木正章)
勝利を喜び笑顔でポーズを取る埼玉の選手たち(撮影・鈴木正章)