第90回センバツ高校野球大会を甲子園で取材中。5日分をまとめて更新。

【22日】

 東京・築地の会社へ。明日からの日刊(N)式テーブルでの速報の準備。早大スポーツの学生アルバイトさんに36校分の選手名をデータ入力してもらった。その後、昼前に会社を出発し東京駅へ。新幹線のぞみでいざ大阪へ。車内で崎陽軒のシウマイ弁当で腹ごしらえ。新大阪で電車を乗り換えディープな街と言われる西成区へ。実は昨夏の甲子園に続き、ここにあるビジネスホテルに今春も宿泊することにした。駅から徒歩2~3分と近くとにかく部屋が広くてきれい。線路が近く電車の音が多少気になること、甲子園まで40分ほどかかることに我慢すれば問題なし。ホテルにチェックインして大阪・北区にある日刊スポーツの関西本社へ。夜8時から明日からの甲子園取材に備えてのミーティングに参加。その後近くの居酒屋さんに移動していわゆる「決起集会」。調子に乗ってちょっと飲みすぎた。

【23日】

 センバツ開幕。早朝7時から第1試合:聖光学院-東筑の試合前取材があるため5時半に起床し甲子園へ。記者席に荷物を置いて聖光学院・斎藤監督を取材。「緊張感が取れてきて、少しワクワクしてきた」。その後ネット裏の記者席で開会式を見た。瀬戸内・新保主将の選手宣誓をメモしてすぐに全文を速報。君が代を独唱した水戸三(茨城)の女子高生があまりにも見事だったため、開会式後取材。4月から東京芸術大に進学。オペラ歌手を目指すという。冨永春菜さん。名前を覚えておこう。

 第1試合は聖光学院が東筑に勝利。試合後東筑の石田投手を取材した。彼は昨夏もエースで甲子園に出場したが初戦敗退。この春も白星をつかむことはできなかった。「全国で勝てないのは自分に甘さがあるから」。涙はなく悔しそうないかにも気の強そうな表情で取材に答えた。まだもう1回、夏がある。今度こそ、勝利をつかみ取って欲しい。

 第3試合、明秀学園日立-瀬戸内を記者席で見ているとスマホが鳴った。誰かからショートメール。開いてみると夏の埼玉大会、そして甲子園を一緒に取材したM新聞埼玉支局の新人女性記者Nさんからだった。「お久しぶりです、う、うらやましいです」というメッセージが入っていた。実は前日「甲子園に行ってきます」とメールを送っていた。残念ながら今春のセンバツに埼玉県の学校は出ていない。昨夏は花咲徳栄が見事、埼玉県勢として夏の甲子園初制覇を果たした。N記者とともにその瞬間を見届けた。それだけに埼玉県勢が出ていないのはやはり寂しい。もし埼玉のチームが出場していたらN記者は主催社なので当然、甲子園に来ていたであろう。「夏とは一転、甲子園は寒いよ」と返したら「寒くてもやっぱりうらやましいです…」と返事が来た。100回大会となる夏は埼玉から2校が出場する。Nさん、また甲子園に戻ってこられるといいね。

【24日】

 午前7時半開始の第1試合の試合前取材に備え5時半に起床。甲子園へ。第1試合は21世紀枠で出場の由利工-日大三。由利工は健闘したが0-5で敗れた。試合後は由利工の監督さんを取材。21世紀枠はこのところ大敗などが続くとその存在意義が問われる。監督さんは言った。「地元の選手だけのチームでもひたむきにやっていればこんな素晴らしい舞台に立てるんだよと。高校生として、野球以外のところも評価してくれるんだよと、他の学校にも言いたい」。

 第3試合にはこれまた21世紀枠の膳所が登場。持ち味のデータ野球を駆使。メジャーリーグのように打者によって守備位置を変えるシフトで強豪に挑んだ。序盤は変則シフトがはまった。これは行けると期待が膨らんだが終わってみれば0-10。それでも、膳所ナインは甲子園にその名を残したと思う。監督さんは「結果は0-10ですが、求められていた部分は出せた」と話した。データ班による創意工夫した野球。確かに膳所は持ち味を十分に甲子園で披露した。「ヨシ、うちも」と思ってくれたチームがあれば、この出場も意義があるのではと思う。

【25日】

 日曜日。第1試合から好カードが続くとあって甲子園も早朝からにぎわった。第1試合は明徳義塾が4番谷合の劇的な逆転サヨナラ3ランで勝利。馬淵監督に甲子園50勝をプレゼントした。第2、第3試合は和歌山と奈良の「智弁兄弟」が揃って勝利。アルプス席の「C」の人文字、ブラスバンドの演奏も見事。取材を終えるとなんばへ。昔、東京で一緒に仕事をして今は大阪本社に戻っているTさんと一杯。日曜日とあってなんばは多くの人でごったがえしていた。居酒屋さんで1次会。2次会はNGK(なんばグランド花月)近くのたこ焼き屋さんへ。これが美味しかった。350円。食い倒れの街・大阪を実感。Tさん、ごちそうさまでした。

【26日】

 優勝校の大本命・大阪桐蔭が登場。21世紀枠で出場の伊万里に14-2で圧勝した。大阪桐蔭を取材しようと思ったが、伊万里へ。20安打を浴び14点を奪われたエースの山口くんを取材した。「根尾くんのスイングにはびっくりした。しかもしっかりと見極めてくる。投げる球がなかったです」。その言葉には実感がこもっていた。とはいえ、打たれても打たれても逃げなかった。球速はほとんどが110キロ前後。それでも最後の8回は3者凡退に抑えた。「収穫は最後を3人で抑えたこと」と山口くん。監督さんも「代えようと思ったけど、何とかして抑えようという工夫が見えたので最後まで投げさせた」と言った。なんだか監督さんの言葉に救われた思いがした。4万5000人の大観衆の前で打ち込まれた山口くん。その気持ちは彼にしか分からない。でも、けっして逃げることなくストライクゾーンにボールを投げ込んだ。与四球はゼロ。心の中で彼に「あっぱれ!」をあげた。