こんなにプロ野球が面白いシーズンがあったでしょうか。ひいき球団が下位に沈んだ方々は残念でしょうがセ、パ・リーグともに大詰めのこの時期になって、まだ優勝が決まっていないというのは30年以上の記者生活でも経験がありません。

興奮しているのはファンだけではありません。広島カープに3連覇をもたらした緒方孝市氏(日刊スポーツ評論家)も同じです。

「セもパもここまで盛り上げてくれるのは本当にすごい。過去、こんなシーズンはなかったでしょう。唯一、選手が気の毒に思うのはコロナ禍で球場が満員にならないこと。本当なら甲子園も神宮もパンクするような状況になっているはず。それがまた選手に実力以上のものを発揮するんですけどね」

そう熱く語る緒方氏は19年限りで広島監督を勇退。「しばらくは何もしません」と“フリーター宣言”をしていましたが、完全に野球から離れるのはもったいないと感じてこちらからオファーを出し、昨季の開幕前に日刊スポーツ評論家に就任しています。

そのため2月のキャンプ取材は今年が初めて。そこで緒方氏は古巣・広島は当然として「気になる球団」として複数の球団名を挙げていました。それが阪神、ヤクルト、そしてオリックスだったのです。

阪神矢野、ヤクルト高津、そしてオリックス中嶋の各監督はすべて今年53歳になる緒方氏と同学年。そこに加えて何か感じるものもあったようです。

まず阪神。シーズンを通しても取材が厚いのは、もちろん日刊スポーツ大阪本社の要望なのですが、緒方氏自身も「3年目の勝負に挑む矢野監督に興味がある」とキャンプでは対談も行い、積極的に話を聞いていました。

さらにヤクルトです。高津監督就任の1年目だった昨季から「面白い野球をするんですよ」と注目していました。2月の浦添キャンプを訪問。優勝争いをするという予想こそしていませんでしたが「昨年に最下位だったチームが頑張れば球界が盛り上がるぞ」と高津監督と2人で話し込んでいたものです。

昨季の最下位から…という面ではオリックスも同じ。こちらも強い思い入れがあります。中嶋監督とは現役試合からチームもリーグも違いましたが現役で長くプレーした姿に強く感銘を受けています。

そこに加え、緒方カープ時代に2軍監督として支えた水本氏がオリックスのヘッドコーチとして就任した縁もあって熱が入りました。沖縄から宮崎に移動し、3人による“鼎談(ていだん)”まで行ったのです。

緒方氏がキャンプで接したその3球団がこの時期、ここまで奮闘しているのはなんだか驚きではあります。さあオリックスは最終戦を勝利で終えました。26日は阪神の最終戦です。優勝の行方は。CSは。そして日本シリーズは…。今年のプロ野球、興味はまだまだ続きます。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

ロッテ井口監督(左)とオリックス中嶋監督
ロッテ井口監督(左)とオリックス中嶋監督