<イースタンリーグ:日本ハム1-3巨人(4回表無死降雨ノーゲーム)>◇29日◇鎌ケ谷

2軍の現状をリポートする日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)は、日本ハムのショートに注目した。社会人出身の日本ハム・ドラフト9位の上川畑(かみかわばた)大悟内野手(25=倉敷商-日大-NTT東日本)は、デビュー戦に「1番ショート」で先発出場。第2打席で公式戦初安打を放ったが、試合は4回表無死で降雨ノーゲームとなった。初ヒットは記録には残らないが、上川畑には貴重な2打席となった。

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今にも雨が降り出しそうな曇天だ。出場する選手も空が気になるだろう。ましてや、この試合が公式戦デビュー戦ともなれば、より一層緊張するのかなと感じつつ、上川畑の打席を注視した。

第1打席はカウント2-0からの3球目の内角真っすぐが、止めたバットに当たり三ゴロ。バッティングカウントで、真っすぐを打ちに行きながら、迷いがあったのだろう。ボールをよく見ようと思ったのかもしれない。それでも、止めたバットというのはもったいなかった。

心中を考えると、自分のスイングをしなかったことへの悔いが残ったはずだ。忘れることのできないデビュー打席は、中途半端な内野ゴロに終わった。

そこを踏まえて3回の第2打席を見た。初球は膝元へカーブがボール。カウント1-0から2球目は真ん中低めの真っすぐ。非常にシャープなスイングだった。守備には定評ある中田の横を鋭い当たりが抜けていく。プロ公式戦初ヒットだ。中途半端に終わった第1打席も忘れることはできないだろうが、その悔しさをつなげたこのヒットは、さらに強烈な思い出になるだろう。

失敗をどう挽回するか。原因を自分で受け止め、同じことを繰り返さない対策を持って次のチャンスに臨む。それが試合の中で実行し消化できれば、1つの失敗以上の学習をもたらす。第2打席は見るべきものがあった。

初見のバッティングだけに、第一印象としての感想となるが、大きくテークバックする構えではない。少しバットを寝かせ、そこからスムーズにバットを出してくる。第2打席は1死一塁。併殺打は絶対に避けたい場面で、第1打席と同じくバッティングカウントから、強い打球で一、二塁間へ引っ張った積極性は光った。これで1死一、三塁とチャンスは広がり、第1打席の失敗を取り戻す役目を果たした。

守備も注目していたが、守備機会はなく、4回途中でノーゲームとなった。どんな守りをするか見たかったが、少なくとも試合前のシートノック、イニング間のボール回しを見る限りでは、スローイングが柔らかい。肘の使い方に柔軟性を感じる。足の運びもスムーズだった。試合での生きた打球への反応はどのレベルにあるか、機会があればそこも注目したい選手に感じた。

降雨によって試合はノーゲームになった。上川畑の公式戦初ヒットは記録には残らない。第1打席の止めたバットでの内野ゴロもこれで消えた。もう1度デビュー戦を経験できる。これも上川畑にとって1つの巡り合わせと言えるだろう。

幻の2打席で学んだことを、今度こそ記録に残るデビュー戦で実践できるか。ヒットがなくなり無念な思いが勝るのか、第1打席の悔しさを払拭して心機一転で臨めるか。デビュー戦がノーゲームというのも、そうそうあることではない。ぜひ、上川畑には、この偶然をポジティブなものとして受けとめ、2打席は練習ができたと考えて、またチャレンジしてほしい。(日刊スポーツ評論家)

泥だらけになってベンチに戻る日本ハム上川畑(撮影・田中彩友美)
泥だらけになってベンチに戻る日本ハム上川畑(撮影・田中彩友美)
飛球を追いかける日本ハム上川畑(撮影・田中彩友美)
飛球を追いかける日本ハム上川畑(撮影・田中彩友美)