膳所(滋賀)野球部を後方支援した「データ班」は、アルプスからナインを見守った。

 野津風太さん(2年)と高見遥香さん(2年)は、昨年4月にデータ班として野球部に入部。登録は「外野手」だが、グラウンドに立つことも、マネジャー業務を行うこともない。それでも打球方向の分析などを行い、大きな戦力として貢献してきた。当初野津さんは全く野球に興味がなかった。高見さんはシーズン中ほぼ毎試合、広島の試合を見るほどの「カープ女子」。昨年4月の部活紹介で、データ班募集を知り「面白そうだな」と即決した。

膳所データ班の高見遥香さん(右)と野津風太さん(2018年1月26日撮影)
膳所データ班の高見遥香さん(右)と野津風太さん(2018年1月26日撮影)

 書道8段の腕前の持ち主で、書道部と兼部している高見さん。毎年この時期には書展を行っており、膳所の初戦・日本航空石川戦が行われた24日は「書道パフォーマンス」を行う予定だったが、急きょ変更し応援にかけつけた。

 試合は3回まで0-0。三塁線をがら空きにしたり、外野手がフェンス手前まで深く守るなど、序盤はデータを使った大胆な「変則シフト」がはまった。3回まで強打の日本航空石川を1安打に抑え、膳所は3安打を放った。しかし4回以降は相手の強力クリーンアップに力負けし、59年ぶりのセンバツは0-10で初戦敗退となった。

2回裏日本航空石川1死一塁、山岡広紀の邪飛にダイビングする膳所・有川耀翔(撮影・宮崎幸一)
2回裏日本航空石川1死一塁、山岡広紀の邪飛にダイビングする膳所・有川耀翔(撮影・宮崎幸一)

 試合を見守った野津さんは「残念ながら負けてしまいましたが、序盤の方はデータどおり防げていたと思う。データの有効性はある程度示せたと思う」と肩を落としながらも確かな収穫を感じていた。センバツ出場が決まると打球方向に加えて、甲子園独特の浜風も研究。データ共有をより簡単に出来るアプリも開発した。開幕直前にテスト配信に失敗するアクシデントもあったが、修正し無事初戦前には間に合わせた。

試合後に取材を受ける膳所データ班の野津風太さん(撮影・林亮佑)
試合後に取材を受ける膳所データ班の野津風太さん(撮影・林亮佑)

 「自分たちデータ班が野球班のためにできることはまだたくさんあると思う。模索しながら野球班がより力を高められるようにしたい」とまだまだ緻密なデータ分析を行っていく意気込み。「ボールが分析どおりにいってよかった。滋賀で野球のデータを取っているときとは違う興奮があって、緊張もしましたがすごく楽しかったです」と野津さん。データの有効性とともに、甲子園の楽しさという収穫も手にした。【磯綾乃】