甲子園出場経験のない府立校が、センバツ王者から先手を奪う展開で、観客を沸かせた。28日、豊中ローズ球場で行われた高校野球春季近畿地区大会大阪府予選3回戦。今年のセンバツで史上3校目の春連覇を果たした大阪桐蔭の相手は、メンバー12人の柏原東だった。柏原東は過去10年の夏の大阪大会で、11年の4回戦進出が最高成績。その他の年は2回戦までで敗退している。昨秋の大阪府予選でも天王寺との初戦で0-7で敗戦した。

 この日、柏原東の先発は背番号「6」の黒岩幹矢内野手(3年)。田中正孝監督(58)の「カーブのキレがいい。スライダーよりも縦にいくカーブが有効だと思って」との狙い通り、スローカーブを駆使して初回2者連続三振。結果的に16点を奪われて5回コールド負けとなったが、打線も初回に3安打を放つなど2回まで4-0。リードする展開を作った。

先発した背番号「6」の柏原東・黒岩幹矢投手(撮影・磯綾乃)
先発した背番号「6」の柏原東・黒岩幹矢投手(撮影・磯綾乃)

 この冬意識的に取り組んできたのは、打撃マシンでの速球の打ち込みと毎日30分以上のウエートトレーニング。当初は柏原東に打撃マシンが無く、打撃投手の球しか打てなかったが「この子たちが積極的にやってくれているので」と田中監督が選手たちの姿勢を買って、昨年春に打撃マシンを1台導入した。練習の成果をしっかり初回の猛攻で示した。

 そんな選手たちに、田中監督は「本物を示す」ことを意識してきた。富田林高時代の教え子である元オリックス投手の前田祐二氏(32)を、昨年末初めて柏原東に呼んだ。投手だけでなく野手も、ボールの投げ方やトレーニング方法を“本物”から学んだ。同じく田中監督の教え子のトレーナー・西村典子氏も、毎年指導に訪れる。東海大時代の巨人菅野も指導した西村氏から、選手たちは栄養学やトレーニングの仕方を学んでいる。

 この日の試合の4日前。「大阪桐蔭とやれるだけで幸せ」という雰囲気が流れる選手に、田中監督は「勝ちにいこう。整列の時も堂々と並べ」とゲキを飛ばした。

 努力の成果をセンバツ王者相手に示した。「子どもたちが一番自信になったと思う。言っていたことを実現させている。夏に弾みが付けられる戦いができたかなと思います」。ただの敗戦ではない、夏につながる敗戦だと確信している。【磯綾乃】