過去の嫌な記憶に、どう向き合うか? 実生活の話であれば、無理に思い出すこともないだろう。だが、スポーツの話なら、逃げてばかりもいられない。早大の新主将に就いた丸山壮史内野手(3年=広陵)は、新チーム発足後、小宮山監督に聞かれた。「来年は、どうしたい?」。迷わず「二塁で勝負したいです」と答えた。この秋にレギュラーを獲得した一塁ではなく、本職と自負するポジションを挙げた。

広陵では中村奨成(現広島)と同期。3年夏の甲子園で、遊撃手として活躍した。早大では1年春の開幕戦に2番二塁で出場。定位置をつかみ、順調なスタートと思われた。落とし穴は、最終週の早慶1回戦に待っていた。同点の4回、慶大・瀬戸西の高いバウンドに突っ込むかちゅうちょし、はじいてしまう。記録は安打となったが、一瞬の迷いが勝ち越しを許す決勝点につながった。

「自分のエラーで4年生たちに迷惑をかけてしまった。あのプレーが心の中にありました。セカンドで活躍する姿を見せることが、あの時の4年生への恩返しになると思っています」

軽い気持ちからではない。その試合を最後にスタメンが途絶えた。1年秋、2年春に至っては出場ゼロ。2年秋は代打の1打席だけだった。「実力不足です。早慶戦のエラーでメンタル的に落ち込んで…。何から始めたらいいのかというまま、1年生、2年生が過ぎていきました」。転機は2年冬。「後がない」と、がむしゃらに振って、ノックを受けた。3年春のオープン戦。ケガした主力に代わって結果を出し、秋のレギュラー奪取へつなげた。リーグトップタイの10打点で、5年ぶりの優勝に貢献した。ちなみに、もう1人の10打点は慶大の瀬戸西だ。

来る春、二塁で活躍することは、先輩たちへの恩返しにとどまらない。過去の失敗を克服することを意味する。逃げない決断の行方を見たい。【古川真弥】

早大・丸山壮史の打撃フォーム(2020年10月24日)
早大・丸山壮史の打撃フォーム(2020年10月24日)